世界一簡単な放射線の歴史のお話(後編)

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世界一簡単な放射線の歴史のお話(後編)

2017-08-22

世界一簡単な放射線の歴史のお話(前編)からの続き)

放射線は本当に人体に影響があるんだろうか?ハエと人間は違うんだろうか?

でも、人体実験なんてできないしなぁ。。。

原子力エネルギーは非常に魅力的だしなぁ。。。

人体への影響を調べたいなぁ。。。

なんて、考えがアメリカにはあったのかもしれません。。。
そして、世界は第二次世界大戦へと向かいます。

広島と長崎に原爆が投下される

1927年のマラーさんの報告から18年後の1945年(昭和20年)8月6日午前8時15分。
アメリカ軍が日本の広島に、ウラン型の原子爆弾を投下しました。
3日後の8月9日、長崎にもプルトニウム型の原子爆弾を投下しました。

日本がポツダム宣言を受諾する意思を示していたにもかかわらず、原爆は投下されました。

なぜ二つもの異なったタイプの原子爆弾を投下する必要があったのか?については、諸説いろいろあります。

放射線が人体に及ぼす影響、特に遺伝子に及ぼす影響を知りたかったのではないか?」という説もあります。
「戦争を早く終わらすために仕方なかったんだ。」という説もあります。

まあ、真偽のほどは今回はおいといて、原爆が日本に二つ投下されました
原子爆弾は、爆弾ですので、爆風と熱線で莫大な数の民間人の死者が出ました。

広島の原爆ドームと長崎のカトリック教会 浦上天主堂

そして、大量の放射能が日本にまき散らされました
それと同時にたくさんの放射能による被ばく者が出ました。

原爆から受けた被ばくの影響は?

ショウジョウバエの研究で「被ばくしたら数世代後には奇形がでる」としたマラーさんの論文は、ここにきて一躍有名になります。

なぜなら、

原爆投下の翌年1946年にマラーさんが
X線照射による突然変異体発生の発見
によりノーベル生理学・医学賞を受賞した

からです。
広島・長崎の被ばく者の子供や孫には奇形児ができるんじゃないのか??

マラーさんの実験結果に世界中の注目が集まりました。

マラーさんが原爆投下以前にノーベル賞を受賞していたら、放射線の影響が世界中に知られているため、人道的な理由により原爆の投下は無かったのかもしれませんが、なぜか、原爆を落とした翌年の受賞なのですね。。。

さて、マラーさんのノーベル賞受賞以降、

被ばく者の子供には奇形児が出る!!!

っていううわさが蔓延し、広島、長崎の人はもろに差別を受けました
広島、長崎の被ばく者とは結婚させない。という差別も起こりました。
妊娠した子供を堕ろす人もいました。
未だに差別されている人も現実にいます。。。

アメリカと日本は、原爆投下から5年後広島、長崎の被爆者約10万人の寿命調査を始めました。
この調査は、被ばくをした人がガンで死ぬ割合や、その他の病気で死ぬ割合、その子供たちの奇形や寿命などを調査するものです。
なので、この調査は被ばく者が亡くなるまでの数十年にも及ぶものとなります。

原爆投下から5年後の1950年にできたICRP(国際放射線防護委員会)は、この寿命調査の結果を待つことなく、

「放射線はその量に応じて直線的に被害を(人にも)及ぼす有害なものである」

と訴えました。
これは、原爆で被ばくした人に5年ですでに白血病が過剰に見られたことから、マラーさんの1927年の実験とオリバーさん1930年のショウジョウバエの実験の結果をそのまま人に当てはめたもので、しきい値なし直線(LNT)というものです。
そして、

できるだけ被ばくは避けるように!

という勧告を出します。

ICRPは、ショウジョウバエの実験と同様、広島、長崎の被ばく者から、たくさんの奇形の子供が生まれると予測したのでしょう。
ICRPは「被ばくから人間を防護するために生まれた組織」なんですから、防護に関する勧告をするのは当たり前です。
ですが、

人間が被ばくしたらショウジョウバエと同じように次世代に奇形が出るということを確かめたわけではありませんし、白血病が線量に依存して直線的にしきい値もなく増えることを確認したわけでもありません。

被ばく国の日本からすれば、「原爆落として多数を被ばくさせといて、そりゃないわ」って感じだったでしょう。。。
これにより、多数の人がいわれなき差別を受けるようになったことは事実です。

この時、マラーさんも、

核戦争や核実験から出る放射線は、これから長期にわたって人類に危険を及ぼすだろう。

と主張していました。
当時の科学力では間違っているとはいえない主張でしたが、科学的根拠はほとんどないものでした。

ショウジョウバエの実験で奇形が出たのは被ばくした子供と孫の世代です。
はたして、ICRPの言うように、広島、長崎の被ばく者から奇形児がたくさん生まれるのでしょうか??

二重らせんと遺伝の仕組みの解明

1953年、ワトソンとクリックが素晴らしい発見をします。
DNAの分子構造と遺伝の仕組みを発見したのです。
DNAの二重らせん構造の発見です。
この発見により、1962年、ワトソンとクリックはモーリス・ウィルキンスとともにノーベル生理学・医学賞を受賞しました。

DNAの遺伝の仕組みがわかると、どんどん新しいことがわかってきました。

DNAは、毎日「1細胞当たり」100万回とかのレベルで傷つけられていることがわかりました。
身体の中の細胞は60兆個と言われてますので、60兆x100万回のDNAの修復が「毎日」行われていることになります。
要するに、放射線でDNAに傷がつくのと同じことが、普通に誰にでも起こっていることがわかりました。

そして、その傷はどんどん修復されていること。

その傷が修復されなければガンになったり、子供に奇形が生じることも解ってきました。

広島・長崎の被爆者の子供からは奇形児は出てこなかった。

そして、面白いことに、マラーさんが実験に使ったショウジョウバエの

成熟した精子にはDNAの損傷を修復する機能がない

ことがわかりました。

つまり、マラーさんの実験では、

DNAの修復機構のないショウジョウバエの成熟した精子にX線を当てたため、DNAの修復が起こらず、精子のDNAに傷がついたままの状態だったため、子孫に奇形がでた

のです。

成熟した精子には、DNA修復機構がなかったんですね。。。

後に、それを証明する実験が行われました。
その実験には、DNA修復能力のある未成熟のショウジョウバエの精子が使用され、それにX線を当てて、その次の世代に奇形が出るか?が調査されました。

結果。。。DNA修復の「ある」ショウジョウバエの精子にX線を当てた場合は、マラーさんの行った実験結果とは異なり、奇形は出ませんでした。
低線量放射線による自然突然変異の抑制

つまり、DNAの修復機構がある場合、X線や放射線を当てても、ほとんどの変異は修復され、子供には奇形はでてこないわけです。

人間の精子には修復能力があります。

ですので、広島・長崎の原爆被害者二世、三世にも、奇形はみられなかったわけです。

ICRP(国際放射線防護委員会)は、

「放射線はその量に応じて直線的に被害を人にも及ぼす有害なものである」

と勧告しましたが、実際には、ショウジョウバエのDNA修復のない精子の場合と、人の精子の場合とでは全く異なった結果が出たのです。

つまり、ICRPは科学的に間違った勧告をしていたわけです。

DNA修復のしきい値はどれくらいなのか?

いくらDNAが修復できるといっても、修復能力には限度があります。
そして、この修復限度を「しきい値」と言います。
DNAはいったいどれくらいの線量を浴びたときまで修復できるのか?
これも先の論文で調べられました。

面白いことに、200mSvを瞬間的に当てた場合、当ててないハエと比べると、なんと、奇形は「減った」んです。
1000mSvを瞬間的に当てた場合は、奇形はちょっと「増えた」んです。

DNAってのは、二本のロープがねじれたような構造(二本鎖構造)をしています。
そして、
DNAの二本鎖が二本とも切れた場合に修復する機構
DNAの二本鎖が一本だけ切れた場合に修復する機構

など、修復機構がたくさん存在します。
じゃ、そのそれぞれの修復機構が壊れたらどうなんの?っていう実験も行われました。

まず、一本が切れたときに修復する機構が壊れたハエに放射線を当てたらどうなるの?
っていう実験が行われました。
結果は、線量に合わせて少しだけ奇形が増えました
やっぱり、修復できないと奇形は増えるんですね。

二本とも切れたときに修復する機構が壊れたハエに放射線を当てたらどうなったか?
放射線を当ててないハエに比べて、200mSv、1000mSvを瞬時に当てたものはともに奇形が「減った」んですね。

これは、
DNAの二本鎖切断が修復されなければ、結構致命的なダメージになるので、そもそも発生できない。
おなかの中で死んじゃう。
ってことを意味していると思われます。

これらの実験結果から言えることは、DNA修復がある場合、

・200mSv浴びても奇形は増えない。むしろ減る。
・1000mSv浴びたら奇形が増えた。
・修復できないような変異がたくさんあったら、そもそも受精できないし、発生できないので、産まれてこれない。

ということです。

これは、「広島・長崎の被爆者の追跡調査とほぼ同じ結果」でした。

要するに、

1シーベルト(1000mSv)を瞬時に被曝しても、修復機構がある限りDNAはほぼ修復される。
万が一、修復されなかった場合は、奇形で生まれてくるときもある。
DNAの傷が致命的なものであったら、そもそも生まれてこないような仕組みを生物はもとから持っている。

ということなんです。

しきい値があるかないかは、少なくとも修復能力の有無によって決まる

さて、ここまで理解できましたか?
しきい値なし直線(LNT)ってのは、DNA修復の無いときに限定して成り立つものです。


例えば1mSvとかの低線量被ばくの場合は、DNA修復があるのでそれがしきい値になるわけです。
つまり、DNAが修復されるので、健康被害が発生することがほぼないということです。
もちろん、DNA修復が無ければ、線量に応じて奇形は増えます
しかし、DNA修復がある場合には、ある程度の線量までは奇形などの健康被害はほとんど増えないのです。
参照:2011-06-22 放射能障害に関して閾値あり説となし説に分かれる理由
マラーさんの実験の時は、まだDNAすら発見されてませんでしたのでわかりませんでしたが、今現在ではいとも簡単に理解できます。

LNTモデルを修復能力のある人間に適用すること自体が科学的な大間違いだったのです。

LNTモデルの元データはなんなのか?

マラーさんやオリバーさんの実験の時点では、LNTモデルは、「ショウジョウバエの奇形」に関するものでした。
しかし、今現在、何故か、「100mSvの被ばくでガンで死亡する確率が0.5%上乗せされる」などの説明として、LNTが使用されています。
また、「ガンになる確率が増える」と説明されているものもあります。
これはなぜでしょう?

さっきも出てきた広島、長崎の被爆者約10万人の寿命調査によって、

「短期間の(三か月)200mSv以下の低線量域の被ばくでは、広島・長崎の原爆被爆者においても明らかな癌死リスクの増加は確認されていない」

ことがわかっています。
(最近ではそれを否定する人も出てきてますが。。。)
しかし、200mSV以上の線量を浴びた人では、白血病が増えたりしています。
この血液のガンなどをLNT直線に当てはめて、現在のLNTができているんだとおもうわけです。
LNTを支持している人に、

「LNTの元になったデータはなんですか?」

と聞くと、だいたい返事が返ってきません。
答えられないのです。
癌死の確率が増えるのか、奇形の確率が増えるのか、それとも、急性被ばく症状が起こる確率なのか、はっきりしないのですね。

まあ、もしはっきりしていても、DNA修復がある限り、必ずしきい値はあるので、LNTは科学的には成り立たないのですけどね。。。

低線量の被ばくの影響はわかっている

そうはいっても、しきい値のあるなしではなく、低線量の被ばくの影響はわかっていないじゃないか!
っていう人がいます。

が、これは間違いです。本当は、

低線量の被害は、わからないくらい小さいことがわかっている!

です。

ICRPはなぜ、いまだにLNTを防護基準としているのか?

ICRPは防護基準として、1955年勧告から、

「放射線はその量に応じて、直線的に被害を及ぼす。その被害にはしきい値がない。」

という、「しきい値無し直線;LNT: linear no-Threshold」を提唱しています。
これは、どんだけ少量の被ばくであっても被害が出るよ!(しきい値はないよ!)というマラーさんやオリバーさんのショウジョウバエの実験結果を基にしたものです。

さらに1956年勧告(ICRP,1957)では、LNTを基にして、

「作業者(放射線業務従事者)に対する被ばくを年間50mSvに、公衆に対する被ばくを年間5mSv」

に限定しました。

ICRPは、未だにLNTモデルが「科学的に」間違いだということをいいません。
なぜか?
これは、「政策」だからです。

政府は、安全でないと賠償金を払わないといけないので、できるだけ安全を採用します。
ICRPのいうLNTは、もともと、

「X線とラジウムの被ばくから人間を防護するため」の「政策」から生まれたものです。

科学的な根拠はマラーさんらの研究と、高線量被ばくの急性被ばく症状くらいでした。

政策なので、科学的な正しさよりも、安全を取ったわけです。(まあ、普通は、科学的な知見が出てきたらそれに合わせて政策も変えるもんですけどね。。。)

1990年代から次々としきい値の存在を立証する研究が発表されはじめます。

LNT仮説に関する論文の概要
によりますと、現在は大体8割の科学者がLNT不支持のようです。
まあ、当たり前です。
DNA修復という「しきい値」があるのは明白ですから、しきい値なし直線っていうのは政策的にはありかもしれませんが、非科学的です。
図に示すとこんな感じらしいです。

政策と科学を混同すると、何が事実なのか、科学的に正しいのかがわからなくなります。
放射線の歴史や、LNTができた経緯を知ることで、なにが問題なのかを理解できると思います。

あとは、皆さんが、自分で考えて、自分なりの答えを見つけてみてください。

放射線の歴史年表
1890年代:レントゲンさんがX線を発見
1895年:レントゲンさんがX線の発見を報告
1901年:レントゲンさんが「X線の発見」により第1回ノーベル物理学賞を受賞
1903年:ベクレルさんとキュリー夫妻が「放射線の発見」によりノーベル物理学賞を受賞
1911年:マリ・キュリーさんが「ラジウム、ポロニウムという新元素の発見」などの功績により、ノーベル化学賞を受賞
以降、放射線グッズやレントゲンが大量に使用される。
1927年:マラーさんがX線による影響(X線を当てると世代を超えて奇形が出ること)を論文で報告
1928年:「国際X線およびラジウム防護委員会」が創設される。
同年:国際X線およびラジウム防護委員会が「放射線に対する勧告(医者向け)」を発表
1930年:1930年:オリバーさんが「ショウジョウバエの成熟精子にX線を照射すると、突然変異頻度が線量に依存して増える」ことを証明し、LNT仮説を提唱
1945年:広島と長崎に原爆が投下される
1946年:マラーさんが「X線照射による突然変異体発生の発見」によりノーベル生理学・医学賞を受賞
以降、広島と長崎に差別が生じる。
1950年:広島と長崎の被爆者の寿命調査開始
1950年:ICRPが「放射線はその量に応じて直線的に被害を及ぼす有害なものなので、できるだけ被ばくしないように」との勧告を出す
1953年:ワトソンさんとクリックさんがDNAの二重らせん構造を発見
1955年:ICRPが「放射線はその量に応じて、直線的に被害を及ぼす。その被害にはしきい値がない。」という、「しきい値無し直線;LNT: linear no-Threshold」を提唱
1956年:ICRPが「作業者(放射線業務従事者)に対する被ばくを年間50mSvに、公衆に対する被ばくを年間5mSv」に限定する勧告を提唱
1962年:ワトソンとクリックがモーリス・ウィルキンスとともに「DNAの分子構造と遺伝の仕組みの発見」によりノーベル生理学・医学賞を受賞
1990年~:しきい値の存在がどんどん明らかとなる。
2007年:電力中央研究所により、マラーさんの実験で奇形が出たのはDNA修復がなかったことに起因するものだということが証明される。


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コメント


  1. 汐先 雄治

    LNTが今ひとつ理解できないのですが、
    突如出現したオリバーさんのLNT設定(1930年)が、検証や実験、新たなる発見をよそに、その後世でもそのまま採用されている意図が分からないのです。

    Reply



    • ひろし

      めっさ勉強になりました。
      科学者がこんだけ研究に取り組み解明していることが正しく世の中に伝わる仕組みが重要ですね。
      そうやって人類全体が進化していかないと。

      Reply



      • ひろし

        進化→成長っすね。

        Reply



    • iina-kobe

      わかりにくかったので、オリバーさんの紹介を追加しました。
      LNTが今でも採用されている意図は、政治であり、科学ではないのだと思います。
      ICRPの威厳を保つためというか、彼らの名誉を守るためというか。。。
      実際、ICRPには今はもう科学者はいない気がしますね。

      Reply


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