素人が解説する放射能の恐怖

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素人が解説する放射能の恐怖

2017-08-10

東日本大震災後、非専門家の素人が放射能の影響などについて語るようになりました。

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餅は餅屋

「餅は餅屋」とは、餅は餅屋のついたものがいちばんうまい。
その道のことはやはり専門家が一番であるというたとえです。

昔の人間は、自分が生き残ること、家族が生き残ることを最優先と考え、生きるためには何でも自分でしてきました。
やがて、家が集まってきて集落ができ、それがどんどん大きくなり、やがて村になり、町になり、国となっていきます。
昔は身の回りのことは全部自分自身で出来ていたのですが、人口が増えれば増えるほど、それはだんだんと難しくなっていきます。
ある人は畑を耕して作物を育て、ある人は漁師になり魚を捕り、ある人は木を育てて家を作り、ある人は着物を作り、またある人は勉強を教えます。
人々は、それぞれ自分の役割を持つことで協力し合うようになりました。
こうして、それぞれの仕事に特化した人は、それぞれの仕事の専門家となっていきました。

放射線の専門家とは?

現在の日本においても、何事にも専門家なる人がいて、専門職なるものがあります。
テレビのニュース番組をみれば、おしゃべりの専門家であるニュースキャスターがこういいます。
「本日は放射線の専門家の〇〇さんに解説をお願いいたします。」と。

放射線の専門家って、誰でしょう?
放射線を職業としている人って、誰でしょう?

放射線やエックス線を取り扱う仕事はたくさんあります。
例えば、レントゲン技師、造影剤などを注入したりする医師や技師、注射器などを滅菌するためにガンマ線を照射する医療機器メーカー、ジャガイモの芽に放射線をあてて発芽しないようにするメーカー、空港で手荷物検査をする人、そして、放射線を取り扱う研究者などです。

放射線を取り扱うには、講習を受けて、実技を行い、放射線業務従事者になる必要があります。
大学や研究所で放射性物質を扱う人達は講習を受け、実技指導を受けなければなりません。
医療に放射線を使用する人は放射線診療従事者と呼ばれます。
そして、放射線業務従事者を管轄するのが、放射線取扱主任者です。
これ、実は、国家資格です。
放射線っていうのは、実は1911年、ノーベル化学賞を受賞したキュリー夫人にラジウムとポロニウムが発見されてから、ものすごく研究されています。
いまの段階では、99%は解明されていると言っていいくらいよくわかっています。

レントゲン技師などは、たいがいの衝撃では壊れないように「厳密に密封」された、「密封線源(みっぷうせんげん)」と言われる「放射線源」を取り扱います。
レントゲンや空港の検査の時に当てるエックス線は、X線管という、いわばブラックライトみたいなものに、電気を流して放射線を発生させます。
しかしながら、「放射性物質そのもの」は直接手では取り扱いません。

造影剤などを使用する人たちや、研究者の一部の人などは「非密封線源(ひみっぷうせんげん)」を使用します。
いわゆる、目的用途に応じて自由に希釈したりして使用できる放射性物質です。
生物学でよく使われるのは、3H、14C、35S、32P、45Caなどの、生体内にあるものの同位体(放射線を出す種類の核種)です。
非密封線源は、資格を得て、放射線管理区域内で、用法用量を守ればある程度自由に使えます。

放射線は道具に過ぎない

生物学者などの研究者の一部の人はよく非密封の線源を使用するので、放射性物質を「道具のひとつ」として取り扱うのです。
絵描きさんが絵具を使うのと同じ感覚です。
料理人が包丁を使うのと同じ感覚です。
美容師がハサミを使う感覚と同じです。
なので、放射線に関しても、「何をどうしたらどうなるのか、どうすれば危険なのか、どうすれば安全なのか」を知っています。

ここが、「密封線源しか使わない医者やレントゲン技師」との違いです。
(もちろん、研究しているお医者さんで使う人はいますよ。)

「ボタンをぽちっと押して、放射線が出る装置」のボタンをぽちっと押す仕事なのか、自分で線源を取り扱って、実際に手で操作することのできる仕事なのか、の違いです。

テレビなどで見る人は、本当の専門家ではない可能性が高い

さて、テレビなんかでは、実際に「放射性物質を取り扱ったことのある人」が、「専門家」として、コメントしているでしょうか?
農作業をしたことのない人が、農業について専門的に語れるのでしょうか?
魚を釣ったことのない人が、漁業について専門的に語れるのでしょうか?

あなたは、フェイスブックやツイッターで、投稿ボタンをぽちっと押しますよね。
押したら、投稿がネットに反映されますよね。
あなたは、その筋の専門家ですか?
どのような仕組みで、その投稿が処理され、全世界に反映されるのか、知っていますか?
ボタンを押すだけなら、猿にでもできるんですね。

テレビなんかで言う「専門家」っていうのは、偉い教授さんとかで、研究者だったとしてもすでに研究者としては引退してたりする人なんですね。
また、テレビに出る人のほとんどは、その業界ではそんなにすごくない人だったりします。
テレビの前の皆さんは、「素人に専門的な解説をしてもらっている」かもしれないんですよね。

専門以外の分野に手を出す専門家はいない

デマはこうして作られる:実際にあったデマ編 その1デマはこうして作られる:実際にあったデマ編 その2などでも書きましたが、実際には専門家ではない人が、想像や、机上の空論だけで専門性のある分野のことを語ると、デマとなることが多いです。

きちんとした専門家の人は、専門分野以外のことに手を出すようなことはしません。
なぜなら、自分の専門分野も、専門外の専門分野のこともきちんと尊重しているからです。
また、専門外のことを聞かれたら、「専門外ですが」と前置きしたり、わからないことに対しては「わかりません。」と言います。

私は一応生物学の一部分の専門家ではありましたが、数学の分野とか物理の分野とかに手を出したことはありません。(まあ、わからないからなんですけどね。)

専門外の専門家が専門分野に手を出すとどうなるのか?

皆さんは「週刊 ダイヤモンド」という雑誌をご存知でしょうか?
この雑誌の2012年、9月15日号に、特集2として、
「原発事故後1年半経過で見えてきた放射能汚染の“正体”」
という特集が組まれております。
[amazonjs asin=”B0093NCOIG” locale=”JP” title=”週刊 ダイヤモンド 2012年 9/15号 雑誌”]

ここでは、物理学者の田崎晴明さんの著書「やっかいな放射線と向き合って暮らしていくための基礎知識」を参考にして、記者がいろいろと解説しています。

田崎さん自身は、放射線について、福一の事故後から学んだようです。
彼自身が、「放射線については専門外だ」と公言しておりましたので、これは間違いないです。

この中には嘘がたくさん書いてあります。
例えば、ベクレル(Bq)の解説には、「放射性物質の「量」を測るための単位。」とかいうデマがあります。

正式な解説書には、ベクレルは「放射性核種の放射能」と書かれています。
ベクレルっていうのは「1秒間に崩壊する原子の個数(放射線を出す能力のこと)を表す単位」です。
量を測る単位ではありません。

田崎さん曰く、
「さらに言えば、この表現は別に「わかりやすさを優先して、あえて厳密さを犠牲にした言い方」でもない
「ベクレルが放射性物質の量の単位」という表現は厳密に正しいのだ。」
ということらしいです。

何度も言いますが、ベクレルとは、

「放射性物質が1秒間に崩壊する原子の個数(放射能)を表す単位」

であって、量の単位ではないです。

「一秒に崩壊する原子核の数、核種が分かっていれば、ベクレルは元の放射性物質を表す量「としても」つかえます。」

が、定義は、量ではありません。

その証拠に、

「じゃあ、134Csと137Csの混ざっている1万ベクレルの土の中のそれぞれの放射性物質の量はいくらですか?」

と質問したことがありますが、無視されました。
放射性物質の量を表す単位なんだったら、答えられるはずです。
でも、この質問に答えるのは無理です。

なぜなら、「ベクレルは放射性物質の量の単位ではない」からです。

彼がいう「放射性物質を表す量」として使うには、そこに存在する放射性物質が1種類である必要があるんですね。
だから、「特殊な状況下でのみ、ベクレルは元の放射性物質を表す量「としても」つかえます。」が、正解です。

まあ、田崎さんの解説は誤解を生じるようなダメな部分が結構たくさんあるのですが、全部指摘するのは無理です。。。
基礎がわかってないのかも。。。です。

実際に間違った知識を高校生に教えた例

これと同様に、田崎さんの著書を信用してか、福島県南相馬市の医師、坪倉正治氏は
まず大人が放射線の基礎的理解を (元記事はリンク切れ
という記事で、福島高校に講義に行き、高校生に

ベクレルとシーベルト、放射性物質の量を表す単位はどちらですか?という講義の後に、
「放射性物質の量を表す単位は?」
1) ベクレル 2) シーベルト 3) グラム 4) メートル

という問いを出し、この中から正解を選んだのは4人に1人、残りの3人はほぼ全員シーベルトを選択していました。

と書いています。

これ、坪倉医師は「ベクレル」と答えさせたかったのだと思いますが、正解は、グラムですよね。
放射能量なら、まだベクレルが答えかもしれませんが、物質量となると、グラムが正解です。
私なら、グラムって答えます。

こういう専門外の専門家が、専門家ぶって市民に嘘を拡散しているわけですね。

素人が理解していないのに解説するとどうなるのか?

週刊ダイヤモンドの記事に戻りましょう。
書いた記者さんは、鈴木洋子さんという放射線に関しては素人の記者さんです。
ここでは、

「200mSv/年は、女性の永久的不妊」

と明記しちゃったりしてます。 

これは、広島、長崎の原爆で被爆した女性を差別しております。
しかも、事実誤認です。
原爆でもっと浴びた人も、永久不妊になどなっておりません。
完全に嘘です。

しかも、この図、引用先が食品安全委員会「放射性物質に関する緊急とりまとめ
(2011年3月29日)
となっていますが、この引用もとには、P9.

「多年にわたり多分割又は遷延被ばくで毎年受けた場合の年間線量率(Gy/年)>0.2 不妊」

ときちんと解説されていまして、永久的不妊なんてのは書いていないのですね。

引用文献に書いてあるGy(グレイ)をSv(シーベルト)に勝手に改変したり、書いてない事を「引用してあたかも書いているようにする」のは、ねつ造です。

犯罪です。

しかも、ここでいう200mGyは、「瞬時被ばく」のことです。
もし、広島や長崎の原爆被害者やその親族が見たらどう思うでしょうか?
「放射能を浴びて子どもを産めない体だから結婚させない。」とかって親に結婚を断られるという差別も実際にあったんですよ。
明らかに風評被害を増長しております。

その他いろいろおかしい点はあります(特集の見開きにセシウムの文字が一回も出てこないなどなど)が、全部あげていったら紙面を全部書き換えたほうが速いくらいです。

そして、この記事を、

物理学者の専門家などが、「素晴らしい!みんなに見てほしい!」と、賞賛していたわけなんですよ。
(コメント欄では、変なクマがあらぶってますが。。。)

週刊ダイヤモンド9月15日号第2特集「原発事故から1年半で見えてきた放射能汚染の“正体”」への反響

これが一番危ないんですね。。。こうやって、デマがどんどん拡散されていくのが、「素人が解説する放射能の恐怖」なんですよ。。。

素人が、素人の書いた書物を参考に記事を書くと、とんでもないことになります。
みなさんが騙されませんように、祈っております。

PS・
田崎晴明さんの著書
「やっかいな放射線と向き合って暮らしていくための基礎知識」
については、本人に直接、おかしい点などをメールで指摘しておりますが、かたくなに、自分が正しいを貫いておられるようですね。。。

2012/11/14, Wed 19:18
〇〇さま、
メールありがとうございます。
拙著をお読みいただき光栄です。
(略)
コメントについては、検討させていただきましたが、さしあたっては改訂はしないことにしようと思います。
(以下略)

メルマガ 2013.5.17 発行no.2より加筆修正


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