いちから聞きたい放射線のほんとう 書評

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いちから聞きたい放射線のほんとう 書評

皆さんこんにちは。
以前のファクトチェック福島をファクトチェックしてみたというエントリで、

「いちから聞きたい放射線のほんとう」という本の書評(というかファクトチェック)は私のメルマガno.46 2014.3.28発行でも書いていたので、近々アップしますね。

って書いてたのに、半年くらいアップしてなかったことに気付いたので、2014年3月28日発行のメルマガno.46より、物理学者の菊池誠氏が出した「いちから聞きたい放射線のほんとう」という本について書いていたエントリーを一部加筆して公開します。

みなさんこんにちは。
今回のメルマガは主に放射線防護に関する本の書評となっております。
放射線の身体に対する影響はやはり生物学の専門分野なので、他分野の人が間違った知識で素人さんにレクチャーをしているのを見ると、おいおい。。。って思っちゃいますよね。
みなさんも経験があると思いますよ。
大工さんに対して絵描きさんが釘の打ち方をレクチャーしたり、電気屋さんにミュージシャンが配線のしかたをレクチャーしたりしてると、おいおい!って思いませんか?
それとおんなじことですね。

いちから聞きたい放射線のほんとう 書評の前に

住民にわかりやすく説明する必要性

福一第一原発事故のあとから、

科学者の言葉を住民が理解できるようにすることが大事であり、その仲介をする通訳者が必要である

ということを私はず~っと言い続けてきました。

前回のメルマガで書いたように、科学者は感情を排除して論理的に考える訓練をしております。
一方で、住民の皆様は論理的に考えるときもやはり感情が入ってしまうことが多々あると思います。

誰かにものごとを頼むときでも、買い物をするときでも、全く知らないお店よりも、知り合いがいるからこっちのお店で買い物をしよう!ってなると思います。

放射線に関する話題でも、この人は東京大学の教授だから信用できるんだ!とか、テレビに出てるんだからすごい人なんだ!って思ってしまい、ついついその人が言っていることを鵜呑みにしてしまいますよね。

私も、自分の専門外の出来事についてはついついそういう傾向がでてしまいます。
だって、まったく知らない事なのですから、判断基準がないのです。

だから、放射線の影響に詳しい科学者のいう事を翻訳して、

住民にわかりやすくその「判断基準」を示して、説明して、対応していく。ということが必要なのですね。

放射性物質に対する不安

福一第一原発の水素爆発により放射性物質がばらまかれて以来、被災地以外では、

どれくらいの線量があれば身体に影響を及ぼすんだろうか?うちの子供は大丈夫なのだろうか?まあ、うちは関西だし関係ないよね~。

という話題が続いております。
そして、被災地の福島県などの人は、やっぱり身体に影響がでたり将来子供がガンになったりするんじゃないかなぁ?って不安に思っている人もまだまだ多いです。

事故から3年が経ってます。※当時です

事故当時、私は「放射線の影響で将来ガンになったら一億円あげるから、毎月3000円の保険料を私に払ってください!」って言ってました。。。

一万人くらい入ってくれたら今頃大金持ちだったのに。。。

と言う話は置いといて、

放射性物質に対する不安は一人ひとり違いますので、大丈夫だ!という判断をする基準も一人ひとり違います。

いまでも、1ベクレルでも入っていたら嫌だ!と言う人もいれば、1万ベクレルくらい平気だからイノシシ肉でもマツタケでも食わせろ!っていう人もいます。

この基準を一人ひとりで考えてもらうために、国は、将来ガンになったりするのにはこれくらいの放射性物質の量が必要ですよ!っていう「基準」を出す必要があります。

ICRPの基準

当時の民主党政権が基準としたのが国際放射線防護委員会(こくさいほうしゃせんぼうごいいんかい、International Commission on Radiological Protection、ICRP)という国際的な組織が出している放射線防護の基準です。

なので、今現在の日本では、このICRPの出しているLNTによって、放射線防護をしましょうね!っていう事になっています。
しかし、この基準は、かなり古いです。
だいたい50年くらい遅れてます。
(LNTについての詳しい解説は、メルマガno.6などを参照ください!ステマ)
※本ブログでは世界一簡単な放射線の歴史のお話(前編)世界一簡単な放射線の歴史のお話(後編)に書いております。

そのICRPの基準値は、

原発からでた放射性物質による被ばくが100ミリシーベルトで、ガンで死ぬ確率が0.5%増える

というものです。

地球には自然放射線というものがありまして、日本では一年で2.1ミリシーベルトくらいあります。
日本で生活している人は、事故前からず~っと、嫌でも年間2.1ミリシーベルトの被ばくをしてます。
50年もすれば100ミリシーベルトに達するのですが、なぜか、自然放射線はいくら増えてもいいようです。

年間6ミリシーベルトくらいの自然放射線のある国では、20歳になる前に合計100ミリシーベルトに達するのですが、自然放射線が原因でガンが増えたという報告なんかはありません。

また、広島、長崎に落ちた原爆による追跡調査でも、100ミリシーベルトでガンが増えたという報告はありません
何故か?
それは、生き物には、修復と回復があるからです。

なのに、なぜか、「放射線防護の基準」では、100ミリシーベルトで、ガンで死ぬ確率が0.5%増えるから、できる範囲で防護しましょうね!となっております。
なので、現在の日本の判断基準は

原発から出た放射性物質による総被ばく量が100ミリシーベルト

を境に行われております。

なんでガン死が0.5%増える100ミリシーベルトが基準なのか、自然放射線を普通に浴びていたら50年で100ミリシーベルトに到達するのに、その時点で0.5%ガン死が増えるとは、なにをゼロ基準として扱っているのか?などなどの疑問は無視して、原発から出た放射性物質の総被ばく量が100ミリシーベルトならダメ。というわけです。

簡単に言うと、

年間2.1ミリシーベルトの自然放射線は、毎時0.23マイクロシーベルトですので、線量計で測って出た数値から0.23マイクロシーベルトを引いた数値の合計が100ミリシーベルト(100000マイクロシーベルト)になったら、ガンで死ぬ確率が0.5%増える。

ってのが今現在の基準ってことになります。

いつもは、人工放射線も自然放射線も同じだ!!!って言っているのに、自然放射線と原発から出た放射線を完全に区別していることがわかりますよね。
私には理解できませんが、偉い人の頭の中では矛盾ではないのでしょうね。。。

そして、その放射線防護を簡単に書いたよー!っていうのが、
「いちから聞きたい放射線のほんとう 菊池誠x小峰公子」という本です。
菊池誠さんは大阪大学サイバーメディアセンター教授の物理学者で、専門は計算物理学、統計物理学です。
ちなみに、横川氏から、この二人は許さない!と名指しで言われたのが私と菊池誠氏です。
参照:立憲民主党公認候補のおしどりマコ氏らに殺害予告されたことがある件
この教授が、小峰公子さんという素人さんとお話をしながら放射線のほんとうのことを知っていき、放射線防護について学んでいくというストーリー構成となっております。

なぜ、物理学者が放射線防護についての本を書くのかは謎ですが、菊池誠さん(キクマコさん)とはツイッターなどでも絡んだことがありますので、さっそくこの本を購入して読んでみました。

すると、ほんとうのことを話している本のはずが、いろいろと嘘が入っているような。。。また、素人にはわかりにくいような。。。という印象を「個人的に」受けました。

なので、書評っていうか、不思議な点やこうだったらよかったんじゃないのかなぁっていう点をまとめてみました。

いちから聞きたい放射線のほんとう 書評

※現在はたくさんの方の指摘により改定されているものもあるかと思われます。私の持っているのは初版です。

副題が「いま知っておきたい22の話」というこの本は、物理学者のキクマコさんと素人の小峰公子さんとの会話形式で22の話題が進んでいきます。

まえがき

まず、まえがきですが、小峰さんはこの三年間、なにも学習してこなかったようで、シーベルトってなに?とかっていう質問から入ります。
これくらいは、ネットで検索したらいくらでも出てくるし、わかりやすく書いたブログなどもたくさんあるので、もうちょっと勉強してほしい所ですね。
(私のメルマガでも簡単に解説してます!ステマ)
参照:素人が解説する放射能の恐怖など
あれだけメディアで騒がれてるのに、今まで全く関心がなかったのでしょうかね。

放射線が生物に与える影響についてはまだよくわからないこともあるよ

とキクマコさんは言っておりますが、放射線が生物に与える影響は実はよくわかっております

放射線が生物に与える影響はよくわかっているんだけども、その線量や場所によって、その影響がいつ、どのような形でガンになったりして表に出てくるのか?が人によってまちまちだったりするから、一般的な答えは無いだけ

です。

生物には個体差がありますので、いつその影響が出てくるのかは、それは誰にもわからないということです。
誰にも、誰がいつ病気になるのかなんてわからないわけですが、少なくとも、放射線が生物(DNAや細胞)に与える影響やそのメカニズムなんてものはとっくの昔にわかっています。

原子核の話

1つ目の話の「みんなつぶつぶでできている-原子と原子核のこと」は物理学の分野ですので、間違いはないと思ってましたが、

p.22
・原子の直径が1kmだとしたら…電子はそこから1kmくらい離れたあたりにいる。

って書いてあります。

電子は原子核のまわりをぐるぐる回っているので、もし電子が1km離れたところにあったら、原子の直径は2kmになるはずですよね。。。
原子の直径が1kmなんだったら、電子の半径は最大で500mですよね。。。

p.25
・自然界にあるのは92番のウランまでで、それよりも原子番号が大きいのは全部人工的に作られたものなんだ

と書かれています。
原子番号94番のプルトニウムなんかは微量ですが自然界にあることが知られておりますので、これは間違いですね。
中川恵一氏も同様のことを言っておられたので、昔の人は学校でそう習ったのかもしれませんね。

アルファ線の話

2つ目の話の「放射線はやるせなさエネルギー-α線のこと」として、アルファ線のことを解説してます。
やるせなさエネルギーってのもよくわかりませんが、普通の人にはわかりやすいのでしょうか?

p.41
・ヘリウムはもともとα線で、地下の放射性物質の崩壊の果てにできた貴重なものだ。

これだけではなんでヘリウムが貴重なのかわからないので、解説します。
実はヘリウムは、自然界にあるアルファ線を出す放射性物質(ウランとかプルトニウムとか)の崩壊によって作られて、それが岩の下などに貯まったものです。
ヘリウムは天然ガスなどと同じように「有限」の埋蔵資源です。
よく、声の変わるパーティーグッズや、空気よりも軽いから風船の中に入れて飛ばしたりしますが、そもそも「ガス」として優秀なので、半導体とかを作るためにとっても便利なんですね。
ちなみに、なんでヘリウムを吸うと声が高くなるのか?という疑問を皆さん一度は持ったかと思われますが、答えは、ヘリウムの中では音が空気中よりずっと速く伝わるためです。
ヘリウムを吸入してから発声すると、音が早く伝わるから高い声になるのです。
さらにちなみに、音が空気中よりもずっと遅く伝わる「六フッ化硫黄ガス」を吸うと声が低くなります。
ユーチューブにも面白い動画がありますね。
Mythbusters - Helium and Sulfur Hexafluoride
一般の人には、放射性物質が身近なものであることを認識して欲しいので、こういうネタも書いてもらえたらわかりやすかったと思います。

ガンマ線の話

4つ目の話の「光ってつぶつぶ-ガンマ線のこと」の

p.57
・シンチレーション・カウンターではガンマ線しか検出できない

と断言しちゃってますが、液体シンチレーション・カウンターではベータ線も検出できます。
なのでこれは嘘ですね。

生物学的半減期の話

6つ目の話の「からだのなかの放射性物質-生物学的半減期のこと」

p.72
・からだは似てるものを区別できないから勘違いして取り込んじゃうんだ

っていってますが、これは間違いです。
似ているカリウムとナトリウムなんかは身体の中でもきちんと区別されております。
レセプターも違います。
似ているから区別できないんじゃなく、同じものだから区別できないのです。

ベクレルの話

8つ目の話の「ベクレルってなに?」の
p.85には、

・ベクレルは放射性物質の量を表している

と書かれています。

ベクレルってのは「放射性物質が一秒間に何個壊れるかを示す単位」であって、決して、放射性物質の量を表す単位ではありません

もし、ベクレルが放射性物質の量を表す単位なのであれば、一万ベクレルの土に含まれているセシウム137、134、カリウム40などの放射性物質の量を表せるはずです。
が、それは無理です。
それぞれの放射性物質がどれだけの量入ってるかが解らないからです。

しいていうならば、「ベクレルは放射性物質の量を表している」が成り立つときは、「一種類の放射性物質のみ存在する場合」です。

一種類の放射性物質のみが入っているのであれば、そのベクレル数より、その放射性物質の量を表すことは可能です。
例えば、セシウム137が一万ベクレルあった場合、セシウム137の量を示すことは可能です。
しかしながら、ベクレルは「放射性物質の量を表す単位」ではないので、セシウム137と134などの二つの放射性物質が混ざっていた場合は、そのそれぞれの量を表すことは不可能です。

なので、「ベクレルは放射性物質の量を表している」は、特殊な条件の時のみ成り立つものであり、この文面で「ベクレルは放射性物質の量を表している」と言い切るのは間違っています
ましてや、複数の放射性物質が放出された福一事故の事を語るのであれば、この理解は確実に間違っています。

放射性物質によるDNAへの影響の話

9つ目の話の「ふたつのシーベルト-等価線量と実効線量」のp.94にはこう書かれてます。

・α線でもβ線でもまずは細胞の中の原子や分子に次々とぶつかって、電子をはじき飛ばす…
水分子の電子がはじき飛ばされると、最後には活性酸素ができるの…
活性酸素はほかの分子と反応しやすくて、DNAを傷つけるんだ…
β線とγ線の場合、活性酸素がDNAを攻撃するほうが多い。
いっぽうα線は、DNAを直接壊す作用が強い

まず、この、DNAを傷つけるという表現と、壊すという表現がごっちゃになった表記はあまりよろしくないですね。
DNAを構成している塩基と塩基のつながりを切断しちゃうようなものを傷つけるといっていると思うんですが、壊すという表現は、DNAをバラバラに破壊しちゃうようなニュアンスをもっています。
この壊すという表現は、全部「傷つける」に変えたほうがいいですね。

DNAを傷つけるってのは、一般の人はわかりにくいお話だと思うので、少し解説します。

私たちの身体の中では、DNAの損傷が1細胞につき1日あたり5万~50万回の頻度で発生していると言われています。
一個の細胞で一時間に約2万回の損傷です。
毎秒5個のDNAが損傷を受けてます。
私たちの身体を構成する細胞は約60兆個ありますので、一日で60兆個x50万回の損傷が発生しております。
体全体では一秒間に300兆回のDNAが損傷してます。
誰でも、普通に生活していてもです。
そして、そのほとんどがDNA修復によって回復されていきます

修復が失敗し、ガン細胞になるのが一日に約3000個。

一秒間に約0.8個のガン細胞ができてます。

一秒間に300兆回の修復で0.8個のエラーが出る。
人間はこれくらいのDNA修復能力を持ってます。
わかりやすくいうと、一秒間で300兆円のうちの1円にも満たないくらいの大きさで計算間違いを起こすっていう事です。

そして、たとえDNAが修復できずにガン細胞となっても、そのほとんどは防御機構である細胞死などによって破壊されるためガン細胞はなくなっていきます。
なので、多少DNAが傷ついたからって、ほとんど修復メカニズムで治っちゃいます。

また、DNAに変異が入ったからといって、それがガンの原因になるなんてことはほぼありません。
人間のDNAは約31億個(塩基対)ありますが、ここに変異が入ったらガンになるよ!って配列は1000~1万くらいだと思います
(あくまでも私の感覚でです。100個くらいあるがん抑制遺伝子とガン遺伝子の重要な部分はそれくらいの塩基数かな?と勝手に想像してみました。違うなら教えてください!)

では実際に、

放射線1000ミリシーベルト(1Gy=1グレイ≒1シーベルト)を浴びたら、どれくらいのDNAが傷つくのでしょうか?

1000ミリシーベルト(1Gy=1グレイ≒1シーベルト)の放射線で引き起こされる遺伝子の変異細胞一個あたりだいたい0.27個です。

一気に、1000ミリシーベルトなんて放射線を浴びるとちょっと修復が追いつかなくなり、遺伝子の変異が起こったりします

しかし、さっきお話したように、人は誰でも一日に3000個くらいのガン細胞が産まれているんですよね。。。
1000ミリシーベルト(1Gy=1グレイ≒1シーベルト)を一気に浴びた場合、その放射線がガンの基になる遺伝子に変異を起こして、かつ、それが修復系で修復されずに生き延びる確率ってのはほぼほぼないです。

このお話は、一気に1000ミリシーベルト浴びてDNA修復が追いつかなくなった時のおはなしなので、数マイクロシーベルト程度の線量では、修復が十分に追いつくので、また違ったお話となります。

放射性ヨウ素の話

12個目の「ここまでのまとめ」の

p.124
・放射性のヨウ素や放射性のセシウムは自然界にはない

これは間違いです。
放射性ヨウ素129ってのが自然界にはあります
微量ですが。

放射性物質はうつらないの話

P.131
・「ピカがうつる」とか被爆二世の問題とか…放射性物質は…もちろん、うつったりしない

放射性物質は、うつるものがあります。

原爆が爆発したりすると核分裂が起こり、中性子線が出ます。

中性子線は物質に当たると、その物質を放射性物質にしてしまう「放射化」という現象を引き起こします。

たとえばコンクリートに中性子線が当たると、そのコンクリートの成分が放射性物質になったりします。
なので、実際は放射性物質がうつることもあるんです。

東海村の事故でも、中性子を浴びた人の体内で放射化が起き、体内のナトリウムが放射性物質になりました。
よって、「ピカがうつる」は、中性子線による影響が大きいものと思われます。
なので、「放射能はうつったりしない」という断定は間違いです。

もちろん、福一の事故では中性子線はほぼ出てませんので、今回の事故ではうつったりしてません。

また、うつるというのは、移動する。という意味もあります。
放射性物質を体内に取り込んでしまった人の血液や排泄物は放射性物質を含んでいますので、それを浴びたりすれば、物理的に放射性物質が移ることになります。
例えば甲状腺の病気で放射性物質による治療を受けている患者の尿が、他の場所に「移っている」ことはよくある現象です。

また、被爆した人の遺伝子が放射線により変異していた場合、その変異がその子供に移ることも必ずあり得ます。
ただ、その変異が、見かけ上の形態に変化を表さないからわからないだけです。
っていうか、生き物は、放射線などによる変異の蓄積によって進化してきたと考えられているので、放射線による変異が遺伝しないなんてことは科学的事実に反します。

その他

p.133
・放射性セシウムは泥にくっつくとなかなか離れない

これは、放射性セシウムだけじゃなく、セシウムの性質なので、放射性セシウムと限定するのは表記ミスだと思います。

p.140
・がんっていうのは、遺伝子が変化して、細胞の増殖が止まらなくなってしまうんだ

ガンの定義は
1.細胞の増殖が止まらなくなること、
2.その他の組織に浸潤すること 
です。
細胞の増殖が止まらなくなるだけならガンじゃないです。
それは良性腫瘍とかって呼ばれるものです。

p.142
・どの細胞にも同じ遺伝子が1セットずつはいってる。

この表現はものすごく誤解を招きます。
私がツイッターでこの表現をしたところ、やはり誤解した素人さんがいました。
その時の会話がこれ

いいな:どの細胞にも同じ遺伝子が1セットずつ入っている。←一セットっていくつだよ。

素人さん:ほぼ素人だけど、その人が持ってるあらゆる種類の遺伝子がそれぞれ一個ずつ入ってるって言う風に
読めるけど違う?

いいな:違う。二個ずつだよ。ほら、これじゃ素人にはわからない。

素人さん:ごめん2個ずつとは読めないな。それこそ5個1セットのレトルトだってあるし……
その辺はあまり重要とは考えてないんかしらね。

いいな:こういう曖昧な表現が至る所に出てくるんですよ。簡単に説明するのと、曖昧に説明するのとは違うよね。


素人さん:なるほど… 一とおりの遺伝子=1セットと考えたから一個ずつかと思ったの。
2個ずつなら2セットの方がまだわかるな。

いいな:普通はそう書くのよ。。。

素人さん:普通はそう書くなら「1セット」は曖昧な表現ではなく明確に誤りのような気がする…

いいな:普通は一対のとかって書きます。


素人さん:なるほど。対なら2個ずつ以外あり得ないですね

以上

p.145
・リチャード・ドーキンスが言う利己的遺伝子だね。…DNAがいちばんうまく増えていけるように生物は進化した。

これは、素人さんのよくやる間違いで、

ドーキンスさん自身が、
利己的遺伝子論は遺伝子が意思を持って振る舞うと言う意味ではない。
と明確に言っています。

利己的遺伝子と呼ぶのは、進化が「人間の幸福のため」ではなく、「遺伝子がいかに自己複製を増やすか」をめぐって進化しているように見えるからですが、実際に遺伝子が視点や意志を持っているという意味ではなく、

私達が遺伝子の視点に立って考えることで、進化を分かりやすく説明してみた比喩

です。

p.146
・特に放射線の場合は、DNAの二重らせんを両方とも切ってしまうことが多くて、そうなると、修復しそこなうこともある…2本とも切れちゃうと、元に戻すのが難しくなるわけ…コピーする相手がいないからか。
そうすると元と違うDNAができちゃうんだ。それが間違ったまま再生されてしまい、がんになって現れる…

この箇所はつっこみどころが多くて訂正できないので、文章自体を以下に書き換えてみます。。。

特にα線の場合はエネルギーが大きいので二重らせんでできているDNAをハサミで切るようにスパッと切断してしまうことがあって、そうなると、DNAの複製ができないから細胞自体が死んじゃうこともある。
(※コピーする相手がいないからではない。)
スパっと切断されても普通は磁石がくっつくように元に戻るのだけれども、高線量によって近い場所の2か所が切断されちゃた場合には、DNAがすぽっと切り取られた状態でくっついちゃうこともある。
電車でいうと、2両目が切り取られて、1両目と3両目が連結するってイメージ。
その2両目にあったのがガンを抑制する遺伝子だったりすると、ガンになって現れる…
(※間違ったまま再生(注:複製だと思う)されるから、元と違うDNAができちゃうのではない。

p.147
・100ミリシーベルトの被ばくでがんになる確率が0.5パーセント増える

これは、被ばくでガンで「死ぬ」確率が0.5パーセント増える。の間違い。

p.149
・被ばく量とがんの関係ははっきりわかってて

被ばく量とがん「」の関係ははっきりわかってて の間違い。

以下、p.150,151などは図も含めて全部「がんのリスク」と書かれてますが、
正確には「ガンで死ぬリスク」だと思います。

p.151
・100ミリシーベルト以下の低い被ばく量では、がんのリスクとの関係ははっきりわからないんだ…

疫学調査の結果、100ミリシーベルト以下の被ばく量では、有意差なし。と結論が出ております。
なので、

どれくらい増えるのかはっきりとわからないのではなく、「増えない。」が正解

です。
例えば、アメリカのニューヨーク州とコロラド州を比較すると、自然放射線の線量はニューヨーク州よりもコロラド州の方が高いのに、ガンの罹患率はコロラド州の方が低くなっています

放射線の従事者の調査でも、10ミリシーベルトくらいの差があるのですが、ガンは一般の人と差がないことがわかっています。
原子力発電施設等 放射線業務従事者等に係る疫学的調査
Mortality and cancer incidence following occupational radiation exposure: third analysis of the National Registry for Radiation Workers

飛行機のパイロットやキャビンアテンダントさんは宇宙線により一般人の数倍以上の放射線を浴びますが、一般の人よりもがん死亡率が高いわけではないです。
むしろ、減ってます。
Cosmic radiation and cancer mortality among airline pilots: results from a European cohort study (ESCAPE).
まとめ 低線量の放射線を長期間浴びると健康被害が起こるのか

p.152
・(ICRPによる放射線防護の考えでは)がんのリスクは被ばくの総量に比例して増えると考えることになっている

そう考えるのは否定しませんが、ものすごく古い知見での判断ですので科学的ではなく、国の政策的な物事の考え方です。
科学的な知見から得られた判断ではなく、政治が絡んだものであり、科学とはかけ離れた到底「ほんとうのこと」とは言えないものです。

p.153
・(がんの原因が放射線かどうかにかかわらず)因果関係が証明されないと補償しないというやりかたは見直さないといけないね

この本の中でも一番ダメな部分はここだと思います。
福一から出た放射性物質によるガンかどうかは関係なく補償しろと言っているのですが、これをしたら、全世界のガン患者から要求があれば全員に補償しなくちゃいけません
因果関係は関係ないのですから誰にでも補償が必要となります。
もし、福島県のみとかと限定しちゃうと差別になりますし、どう考えても一番やってはいけない事です。

p.154
・妊娠中に被ばくすると、子どもがなにかの障害を持って生まれるのかどうかだけど、原爆の被害者の調査でわかっていて、妊娠中に100ミリシーベルト以上被ばくしなければ、リスクは上がらない。
ガンのリスクと違って、低い線量ではリスクは上がらないんだ

これは生物学的におかしいですね。
ガン死のリスクはあがる、つまり、DNAに変異が生じているのに、障がいのリスクは上がらないってことは物理的にありえないです。
障がいのリスクがあがらないのは、胎児の発生がうまくいかないがゆえに、流産しちゃって生まれてこれてないという可能性もあります。
この件に関しては、受精率や堕胎率などもきちんと調査したうえで、議論すべきですね。

P.156
・被ばくが少なければ不妊にならないことがわかっていて…

この本全般で言えることですが、被ばくが少ないっていうのはいったい何シーベルトの話をしているのか全く分かりません。
普通は1シーベルト以下なんて低線量ですので、もし、被ばくが少なければが1シーベルト未満だとしたらこの文章は間違っています。
こういう文章を書くのならば、

>瞬時200ミリシーベルトの被ばくで一時的に不妊になるけれども、それ以下の線量や、200ミリシーベルトを慢性的に被ばくした場合では不妊にならないことがわかっている

と、明確に書くべきでしょう。

p.156
・原爆の被爆二世の調査があって、子どもへの影響はみられていない
・DNAの一部が変化してそれが子供に伝わったとしても、その変化がからだに影響を与えるわけではないということ。
遺伝子が変化したからといって、それが必ず何かの影響として現れるわけじゃないんだよ

これも不受胎や流産のことは無視してますね。
発生段階で不具合があると生まれてこないように流産したりしますので、その統計とも比較すべきですし、この文章では、被ばくでは体に変化が起きるような影響は出ない。という意味にとられます。
もちろん不正確です。

p.157
・妊娠前に親が被ばくしたからといって、こどもががんや他の病気になりやすいわけではないって意味だよ

これ、p.143の「生殖細胞の変化だけが受け継がれる」の全否定となってますね。
いったいどっちがほんとうなのでしょうか。
親の生殖細胞のがん関連遺伝子が放射線で変異してそのまま受け継がれてもがんになりやすいわけではない。
ってのは、あきらかにこの本の記述のなかで矛盾しております。

また、「生殖細胞の変化だけが受け継がれる」というのは、現在の科学では否定されております。

p.160
・(甲状腺ガンの)検査をしたらどのくらいの割合で(甲状腺癌が)見つかるのか、データがなかった。

こう書いてありますが、データはあります。
古いものだと47年前の
https://soar-ir.shinshu-u.ac.jp/dspace/bitstream/10091/7895/1/Shinshu_med16-2-07.pdf
とかがあります。

1993年のものだとこれとかあります。超音波検査 による甲状腺癌検診の こころみ

P.165
・このとき(1963年)食べたストロンチウム90は、僕らのからだの中にまだ残ってるはず…
まだ半減期が2回も経ってないからね

ストロンチウムの実効半減期(物理的半減期と生物学的半減期をあわせた実際の体内での半減期は18.3年ですので、半減期は2.78回経ってますので、これは間違いです。

p.167、p.180
・引っ越すだけで年間1ミリシーベルトくらい違うことはいくらでもあるわけ。
もちろん、自然放射線の差くらいは気にしなくていいと思うけどね。

放射線防護の観点から、自然放射線以外の被ばくを年間1ミリシーベルトにしようといっているにもかかわらず、年間1ミリシーベルトの自然放射線は気にしなくていいという理由が私にはわかりません。
普通に考えるならば、引っ越して自然放射線が1ミリシーベルト減るのであれば、そこでの福一由来の放射線量は2ミリシーベルトまで許容できるはずですよね。

p.181
・自然でもないしメリットもない放射線による被ばくは年間1ミリシーベルトに…

低線量放射線にメリットがないといっておりますが、生物学的にはメリットがあることがわかってます。
たとえば、低線量放射線の刺激によるガン抑制遺伝子p53の活性化、活性酸素を除去する抗酸化酵素であるSODやGPxなどの活性化です。
要するに、ラドン温泉などに入り、数マイクロシーベルトほどの微量の放射線を浴びると、身体が活性化するということです。
まだきちんと証明されてはいませんが、ラドン温泉の効能もこれらの生体分子の活性化が原因だと思われます。

P.183
・100ミリシーベルトよけいに被ばくすると、がんの危険性が0.5パーセント増えるから

いつの間にか、100ミリシーベルトでガンの危険性が0.5%増えることになってますが、これは、ガン死のリスクです。
しかも、これはだいぶん昔の予測モデルでしかないです。

最後に

長くなるのでそろそろ書評を。。。
全体的に雑な本ですね。読んでもあまり意味がなさそうに思います。
誰向けに書いたのかもよくわかりません。
いちから聞きたい放射線のほんとうという題ですが、あんまり本当の事も書かれてません
むしろおかしい点のほうが多いように思われます。

こういう優しい解説書っていうのは、正確・簡潔・明瞭が基本です。

それができてないですね。
本を出す前に、生物学者なり、その筋の人にきちんと見せて、添削してもらえばよかったのにって思いました。
おわり


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コメント


  1. ニシノ

    質問です。この時期、山できのこをとって来ておすそ分けする方がちらほらいるのですが、もらった側がはたして大丈夫なのかと不安がっています。先日、お客様でもらったきのこの線量を測りたいから測定所の場所を教えてほしいと聞かれました。困った顔でそんなことを話されていたのですが、こちらはどんな言葉をかけてあげるのが適切でしょうか。 よろしくお願いします。

    Reply



    • iina-kobe

      山でとれた食用キノコを食べる分には何ら問題ないです。なんのために線量を測りたいのかわかりませんが、測定は丁重にお断りすればいいと思います。

      Reply



      • ニシノ

        たしかに、なんのための測定なのかですね。わかりました、ありがとうございます!

        Reply


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