サルでもわかる 子宮頸がんワクチン問題(1)
2017-09-25
子宮頸がんワクチンをうって重症になった人がいるらしい。
子宮頸がんワクチンは危険なのかなぁ?
打たないほうがいいのかなぁ。
と疑問に思っている人がたくさんいるようですので、書き残しておきます。
*このエントリーは、私のメルマガ
no.33「ワクチンって危険なの?」2013.12.20 発行
no.90「問題は量なんです」2015.2.20 発行
no.131「子宮頸がんワクチンはうつべきなの?」2015.12.25 発行
no.142「子宮頸がんワクチンに遺伝子型が関与?」2016.3.18 発行
を合わせて、最新の知見もふまえて加筆、修正したものです。
Contents
はじめに
先日(2015.12.25当時)、
子宮頸がんワクチンを打つかどうかで悩んでいる人がいる
という相談を受けました。
私は、過去のメルマガでも書いているとおり、予防できる死亡は極力避けるのが予防医学であり、予防することによって余計な医療費もかからず、社会のためにもなるので「絶対打つべきだ!」と言っております。
でも、そんなこといわれても、なにがなんだかわからないし、自分や自分の娘が重症とかになったら嫌だし。。。
って思いますよね。
そこで、これを読んだらサルでもわかるよ!って感じで子宮頸がんワクチンについて書いておこうと思います。
書き始めて思ったのですが、ものすごく長くなりそうなので、何回かに分けて書きたいと思います。
できるだけわかりやすく書きますので、すべて見ていただけたら、きちんとした理解ができるようになると思います。
子宮頸がんワクチンの種類
子宮頸がんワクチンには、サーバリックスとガーダシルがあります。
サーバリックス
サーバリックスは、2009年10月にできて、日本での発売が2009年12月に開始されました。
公費での助成は2011年2月1日から始まっていて、今でも公費で受けれます(無料で受けれる期間は決まってます)。
ヒトパピローマウイルス(子宮頸がんになる原因のウイルス、HPVといいます)2種類に対してのワクチンです。
ガーダシル
ガーダシルは、2006年6月に誕生して、日本での発売が2011年8月に開始されました。
公費での助成は2011年9月15日から始まっています。
ヒトパピローマウイルス4種類に対してのワクチンです。
サーバリックスとガーダシルの違い
子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルスは、今までに100種類以上が報告されてます。
で、その100種類すべてに対応させるワクチンを作るのは無理だし無駄です。
なので、サーバリックスは、高リスク型(子宮頸がんになる確率が高い)の2種類のヒトパピローマウイルス(16型と18型)に対するワクチンが入っています。
2種類対応なので、二価のワクチンと言います。
サーバリックスは二価のワクチンです。
これに対して、ガーダシルは四価のワクチンです。
高リスク型の16型と18型+低リスク型(子宮頸がんになる確率が低い)の6型と11型の4種類のヒトパピローマウイルスに対するワクチンが入ってます。
ガーダシルのほうがたくさんのウイルスを防げるんだから良いじゃん!
って思う人がたくさんいると思います。
けど、ヒトパピローマウイルスは100種類以上あっても、そんなにめっちゃ形が違うものではないので、二価のワクチンでもたくさんの種類に効くようです。
これをブリッジング効果と言います。
けども、公的な試験とかはしていないので、あくまでも「らしい」です。
そして、近々、九価の子宮頸がんワクチンが出るそうです。
子宮頸がんになる人数
さて、日本では、
毎年1万人以上の女性が子宮頸がんになり、3000人が死亡しております。
女性の76人に一人が、生涯のうちに子宮頸がんになります。
その中の4人に一人くらいが死にます。20歳以降の女性が子宮頸がんになりやすく、子宮頸がんになると、子宮を摘出したりしてたくさんの人が子供の産めない状態になったり、流産しやすくなったりします。
実際に、年間9000人くらいが手術を受けたりしてます。
これから結婚して、子供を作るぞ!ってなった段階で、子宮頸がんが見つかるってこともたくさんあります。
子供と一緒に人生これから楽しむぞ!って時に、いきなり死亡予告とか、出産できません。とか言われたら嫌ですよね。。。
ちなみに、私のいとこの嫁も、一人の子供を残して若くして死んでおります。
こんな病気、予防できるなら予防するに越したことはありませんよね。
子宮頸がんワクチンの接種による影響
政府は、予防できる死はできるだけ予防しようという予防原則に従って、サーバリックスの発売開始と同時期の2009年12月から小学6年から高校1年の女性に接種を始めました。
なんで小学6年から高校1年の女性が対象なの?ってのは、後述します。
ちなみに、子宮頸がんワクチンは、筋肉注射なので、めっちゃ痛いです。
当時は、
子宮頸がんワクチンを打つと、50~70%の人のヒトパピローマウイルスの感染を無くせる。
ということでしたので、2013年4月1日から定期予防接種化されました。
しかし、
2013年6月14日に、厚労省は積極的な接種を一時的に中止しました
なぜ、接種が中止になったのか?というと、色々な副反応が出た!と世間が騒いだからです。
子宮頸がんワクチン勧奨中止へ 厚労省、副作用で
2013/6/14付予防接種の安全性を議論する厚生労働省の検討部会は14日、4月から定期予防接種の対象に加えた子宮頸(けい)がんワクチンについて「積極的な勧奨は一時やめる」との意見をまとめた。
接種後、体の複数部分に慢性的な痛みが生じる重い副作用が相次いで報告されたため。
これを受け厚労省は、対象者への接種呼びかけを中止するよう自治体に勧告した。子宮頸がんの定期予防接種は原則、小学6年から高校1年の女性が対象。
これまでは自治体が予防接種の案内を対象者全員に送っていたが、これを取りやめる。
希望者については今後も公費負担で予防接種を受けられるようにする。この日の検討部会で、接種後に慢性的な痛みが生じるといった従来にない重い副作用が38例報告された。
この症状とワクチンとの因果関係は分かっておらず、検討部会では情報が集まり因果関係の有無が確認されるまで、ワクチンの勧奨を一時やめるとの意見が多数を占めた。今後、副作用の疑いのある患者を専門医が診断したり、製薬会社に海外での副作用例の報告を求めたりして情報を集めるという。
副作用のリスクが解明され、接種による予防効果が大きいと判断すれば積極勧奨に戻すこともあるという。子宮頸がんワクチンを巡っては、2010年11月~今年3月に接種した推計328万人のうち、重篤な症状を含め、医療機関から報告された発熱やアナフィラキシーショックなどの副作用が1千件を超えたことがすでに判明している。
重い副作用が出たとして、女子中高生の保護者らが「全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会」を今年3月に発足させ、国に予防接種中止を求めていた。
子宮頸がんはヒトパピローマウイルス(HPV)が主な原因で、性交渉などで感染する。
年間約9千人が発症し、約2700人が死亡している。定期予防接種で同様の措置が取られたのは05~10年の日本脳炎ワクチンに続き2例目。
日本は民間の声に非常にナイーブですので、とりあえず中止しましょうってことになったんだと思います。
でも、この政府の判断は間違っていたと私は思います。
なぜか?
今から解説していきます。
日本はWHOから怒られている
タイムリー(2015.12.25当時)なことに、国連のWHOが2015年12月22日、こんな記事を出しました。
子宮頸がんワクチン、WHOが再び安全声明-日本の状況に言及、「真の被害もたらす」
医療介護CBニュース 12月22日(火)21時0分配信 烏美紀子世界保健機関(WHO)の「ワクチンの安全性に関する専門委員会(GACVS)」は、子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)について、
「現在まで、接種推奨に変更を来すような安全性の問題は確認されない」
とする新たな声明を発表した。
勧奨中止が続いている日本の現状にも言及しており、「薄弱なエビデンスに基づく政策決定は、真に有害な結果となり得る」
と厳しい見解が示されている。
声明によると、200万人の少女を対象に行われたフランスの大規模研究データを検討した結果、HPVワクチン接種後に起こる自己免疫疾患について、接種を受けた群と受けていない群とで発症率に有意差がなかった。
(略)
とうとう、日本はWHOから怒られちゃいましたね。
日本は、今現在(2015.12.25当時)、「政策として」、子宮頸がんワクチンを推奨してません。
これがどういうことか?というと、あと10年くらいしたら、
子宮頸がんワクチンを接種した人としていない人とでは、子宮頸がんになったり、それが原因で死ぬ確率が変わる
ということなんですね。
2010年11月~2013年6月までの間に小学6年から高校1年だったほとんどの女性は、子宮頸がんワクチンを接種しているので、子宮頸がんになったり、それが原因で死ぬ人が激減する。
その接種期間以外の人たちは、子宮頸がんになる人が年間1万人、それが原因で死ぬ人は年間3000人となる。
ってことです。
これを、WHOが、「薄弱なエビデンスに基づく政策決定は、真に有害な結果となり得る」と批判しました。
薄弱なエビデンスっていうのは、根拠の薄い証拠っていう意味です。
要するに、WHOは、
「子宮頸がんワクチンをうっても、なんら副反応が出ないのに、なんで日本はうつのやめてるの?それ、殺人だよ?」
って言ってるということです。
ちなみに、
子宮頸がんワクチンを接種していると、ウイルスの感染が60~70%抑えられ、16型と18型のウイルスで起こる子宮頸がんになる前の状態「子宮頸部異形成」は93~98%予防できることがわかりました。
そして、子宮頸がん検診も併せてやると、95%以上の人が子宮頸がんを予防できる
ことになります。
参考:子宮頸がんワクチン
日本では副反応の被害者が出ている?
しかしそんなこと言っても、日本では「副反応」で手足が動かなくなったり、車いすでの生活を余儀なくされたりしている人がいるじゃないか!!!
その人たちはなんなんだよ!犠牲者じゃないのか!!!副反応は出てるじゃないか!
って、普通の人は思うと思います。
子宮頸がんワクチンを打った後に副反応が出た例
たとえば、子宮頸がんワクチンを打った後にこんなことになった人がいますね。
(あ、この記事では、医学を知らない新聞記者が、副作用(ふくさよう)って書いてますが、本当は、副反応(ふくはんのう)です。
「救えるはずの患者を救えない」 子宮頸がんワクチン副作用「問題」はなぜ起きた? とかでも、副作用って書いてありますが、副反応が正解です。
ワクチンの副作用っていってたら、「あ、この人、素人だな」って馬鹿にされますのでご注意を。)
17歳少女を襲った“悲劇” 言葉を失う子宮頸がんワクチンの副作用 「娘を助けて」母親の悲痛な叫びに…
2015.7.2 07:00けいれんや嘔吐(おうと)、全身の痛みなど、さまざまな副作用の報告が確認されている子宮頸(けい)がんワクチン。
特に重篤な副作用に苦しんでいる奈良県三郷町の高校2年の少女(17)と会って言葉を失った。
4年前に予防接種を受けたが、手足のしびれや記憶障害、さらには知的障害の症状も…。
国はワクチンとの因果関係について「調査中」と説明するばかり。
そんななか、地元の町は6月から独自の支援に乗り出した。
「理解者がほしかった」と母親(47)は安堵の表情を浮かべたが、少女には治療の糸口すらつかめない。(浜川太一)計3回接種…会話できない状態に
6月11日夜に少女の自宅を訪ねると、少女は母親に両肩を支えられ、足を引きずりながら姿を見せた。
脚の関節がうまく動かせない様子で、目には真っ黒なサングラスをかけている。
「目が痛むらしく、光を嫌うんです」と母親が教えてくれた。「こんばんは」と声をかけると、少し表情が和らいだように見えたが、返事はない。
「あいさつは?」と母親が促したが、少女は無言のまま腰を下ろした。
母親は「今はあまり会話ができない状態です」と説明する。少女が町内の個人病院で最初のワクチン接種を受けたのは、中学1年だった平成23年10月。
学校からワクチン接種を勧める案内が届いたのがきっかけだった。
ワクチンは、がんを引き起こすヒトパピローマウイルス(HPV)感染を防ぐ効果があるとして、平成22年度に国が「ワクチン接種緊急促進事業」として助成を開始。
HPVは性交渉による感染リスクが高いため、10代の少女への予防接種が効果的とされてきた。だが、少女は接種からわずか2日後に体調を崩し、1カ月間も学校を休んだ。
これまで大きな病気にかかったこともなかった少女は会話も減り、部屋で横になっていることが多くなった。母親が製薬会社や町に問い合わせても、「副作用ではない」との回答が返ってきた。
しばらくして少女の症状が少し収まったため、あまり気にも留めなかったという。
少女はその後、案内に従って同年12月と翌24年3月の計3回接種。
だが、そのたびに腹痛や腰痛など原因不明の症状に苦しんだ。卒業式も受験も欠席、ついにはけいれん
急激に悪化したのは中学3年の9月。腰痛がひどくなり、脚を引きずって歩くようになった。
痛みは長引き、中学校の卒業式も出席できなかったほど。
人生の分岐点となるはずの高校受験の日も、身体を全く動かすことができなかった。(略)
はい。子宮頸がんワクチンの副反応で、四肢の動かなくなる障害、知的障害などが出た。という記事です。
こんな記事を読んだら、誰だって、
子宮頸がんワクチンは重篤な副反応が起こる可能性があるから、受けたくない!
って思うでしょうね。。。
しかし、医者は
「これは精神的なもの」「お母さんがしっかりしてあげないと」
と言ったそうですね。
なぜなんでしょう?
副反応を隠したかったのでしょうか?
ワクチンとは?
記事の内容などを精査するには、基礎知識を知っておく必要がありますので、先にそれを解説します。
ワクチンとは、
ヒトなどの動物に接種して感染症の予防に用いる医薬品
です。
ワクチンには、抗体を作るための「弱体化した病原体(生ワクチン)」、もしくは「病原体の一部や弱体化した毒(不活化ワクチン)」と、抗体を効率よく作らせるためのブースターのアジュバントなどが入ってます。
抗体と、アジュバントという聞きなれない単語が出てきたので、解説します。
抗体とは?
抗体とは、体の中で作られて、ウイルスや菌などの病原体から体を守るために戦ってくれる兵士のようなものです。
この兵士(抗体)をたくさん作って敵に備える(病気にかからないようにする)には、兵士に、「敵である病原体がどんな形をしてるのか?」などの情報を教えてあげる必要があります。
敵が誰だかわからなかったら攻撃できないですからね。
なので、病原体を弱体化させたものや、病原体の一部を体の中に入れてあげて、兵士(抗体)に敵(病原体)の形を覚えさせてあげる必要があります。
兵士(抗体)が敵(病原体)を覚えると、兵士(抗体)は、敵(病原体)が体の中に入ってきたらすぐにやっつけてくれるようになるわけです。
いやあ、抗体(兵士)って、すごいですね!
でも、抗体(兵士)にも欠点があります。
兵士(抗体)は強力な敵はすぐに覚えるのですが、弱っちい敵はあんまり覚えてくれません。
例えば、スズメバチの毒や、ヒアリの毒なんかはすごく強力なので、一回目でものすごくしっかり覚えてくれます。
なので、二回目にスズメバチに刺されたら、「ものすごく強い敵が来たぞ!!!」って兵士(抗体)が過剰に作られて、その急激な生産反応に身体がついていけずにショック症状がでたり、熱が出たりして、最悪の場合、死にます。
これが、アナフィラキシーショックって言われるものですね。
強力な毒と違って、病原体を弱体化させたものや、病原体の一部は、それが原因で人間が病気にならないようにできているので、弱っちいんです。
なので、兵士(抗体)に病原体を弱体化させたものや、病原体の一部を介して敵(病原体)を覚えさせるためには、3回くらい敵の形を教えてあげないといけないのです。
なので、ワクチンは三回くらいうつんです。
インフルエンザワクチンも数回うちますよね?
これも理屈は同じです。
さて、敵(病原体)を覚えた兵士(抗体)は、その敵(病原体)の形を数年間は覚えてくれます。
しかし、何年も敵(病原体)が来なければ「敵(病原体)の形を忘れてしまう」ので、またワクチンを体の中に再投入して「覚えなおさせてあげなければいけない」んです。
子宮頸がんワクチンの場合は、6年間有効とされていますので、6年ごとにうちなおしてあげる必要があります。
抗体は、体の中に入ってきた病原体をやっつけてくれる頼もしい味方です
アジュバントとは?
たいていのワクチンには、アジュバントという増幅材が入っています。
兵士(抗体)が敵(病原体)の形を覚えるとき、敵(病原体)の「写真や解説書」があれば、より速く詳細に理解できますよね?
アジュバントとは、その「写真や解説書」に相当するものです。
兵士(抗体)が敵(病原体)を覚えやすくするためのものです。
このアジュバントには、「アルミニウム」などが入っている場合があります。
このアジュバントに入ってるアルミニウムが、脳の神経を壊死させる!
ということを言う人が時々いますが、んなことはないです。
入っているのは、酸化アルミニウムで、医療でも普通にニキビ治療とかでも使っている安全性が確認されたものです。
何度も何度も試験をして、人体に影響のないようにできています。
なので、
アジュバントには、上記の記事のような副反応のような症状を引き起こすようなものは入ってません
また、
ワクチンをうつと不妊になる!
っていう人もいます。
完全なデマです。
インフルエンザワクチンうって、不妊になりましたか?
子宮頸がんワクチンはむしろ、ヒトパピローマウイルスが原因の子宮頸がんの発症を抑え、不妊にならないようにするための医薬品
なのです。
ワクチンができた歴史
ここらへんで、ワクチンができた経緯をご紹介しておきます。
むかしむかし、非常に感染力の強い、かかったら高熱を出して、下手したら死ぬ「天然痘」という非常にやっかいな病気がありました。
最も古い天然痘は紀元前1350年のヒッタイトとエジプトの戦争の頃に記録されています。
天然痘で死亡したと確認されている最古の例は紀元前1100年代に没したエジプト王朝のラムセス5世で、彼のミイラには天然痘の痘痕が認められるようです。
こんな恐ろしい「天然痘」からなんとか逃れるために、たくさんの人がその治療法や予防法を発見しようと努力しました。
そしてついに、イギリスのお医者さんが、
1. 牛痘(牛の天然痘)にかかった人は天然痘にかかりにくくなる。
2. かかっても、症状が軽く済む
ということを発見しました。
そして、その発見を元に天然痘のワクチンを作りました。
牛から発見されたので、ラテン語の「Vacca(雌牛)」から、vaccine(ワクチン)という名前になりました。
牛痘と天然痘は同じ種類のウイルスなので、一度牛痘にかかった人は天然痘への抵抗性がつきます。
二価のワクチンのサーバリックスでももっと広範囲のウイルスの種類に対応できたような、ブリッジング効果ですね。
天然痘のワクチンが日本に輸入されるまで日本では、天然痘にかかりにくくするために、牛痘にかかった人の膿を自分の傷口にすり込んで、弱い牛痘を発症させて、天然痘を防ぐというちょっと怖いことをしてました。
なんで病原体への抵抗性がつくのか?
っていうのは、免疫というシステムが働くからです。
免疫というのは、
一度入ってきた病原体や化学物質などの特徴を見つけて、抗体を作りだし、再び同じ病原体が入ってきても、抗体がすぐにそれを見つけ出してやっつける
というものです。
さっき説明した抗体(兵士)のことですね。
一度牛痘にかかった人は、牛痘に似ている天然痘のウイルスが入ってきても、すぐに反応してやっつけれる!っていう身体の中の仕組み(抗原抗体反応)を利用するのです。
ちなみに、この免疫系が不全となったのがエイズで、この免疫が自分自身の身体を敵と間違えて攻撃するようになった病気が膠原病(こうげんびょう)です。
そして、その後、ルイ・パスツールという人が、
病原体を培養し、弱毒化し、それを接種すれば免疫が作られる
ということを理論的に証明しました。
このパスツールさん、生命ってなに?にも出てきましたね!
このパスツールさんの証明により、さまざまな感染症に対するワクチンができるようになりました。
ワクチンには副反応がある
先にも書きましたが、子宮頸がんワクチンの接種はめっちゃ痛いです。
しかも、免疫を作るには、一度のワクチンの接種だけでなく、3回くらい接種したほうが効率が良くなります。
何故かというと、一度目の接種では、軽い抗体を作り、二度目の接種でより強い抗体を作り、三度目の接種で、長持ちする強い抗体を身体の中に作るようにするためです。
ちなみに、子宮頸がんワクチンの場合は、二回の接種でも十分に予防効果があるっぽいです。
そして、どんな薬にも副作用があるように、子宮頸がんワクチンにも副反応があります。
ワクチンは、普通は毒性を無くしたか、あるいは弱めた病原体から作られます。
弱いといえども病原体を身体に注入するため、体調が崩れることがあります。
これは、身体が抗体を作るために疑似の敵であるワクチンと戦っているためですので、しょうがないです。
二回目、三回目の接種でも、ワクチンに抗体が反応するため、やはり身体に何らかの影響が出ます。
しょうがないです。
病原性の強い本物の病原体が感染するよりはかなりマシなものなので、これは我慢しないといけません。
なぜワクチンをうつのか?
ちなみに、
インフルエンザワクチンをうっていたのに、インフルエンザに罹ったじゃないか!
インフルエンザワクチンは効果ない!
っていう人が結構います。
しかし、
ワクチンは、かかりにくくする、かかっても症状を和らげる効果を期待するもの
ですので、
ワクチンなしで罹るよりはよっぽどましなのです。
また、病院などでは、周りの人がインフルエンザワクチンを接種していなければ、病気などでワクチンをうてない人がインフルエンザに罹る恐れがあるため、人殺しとなるケースもあります。
ワクチンは、自分の為だけじゃなく、みんなのためにうつものなのです。
@usausa1975 内科医。打つ。第一、ハイリスク患者に感染させないため。健康成人はインフルエンザに罹っても寝てれば治るが、ハイリスク患者はそうではない。第二、インフルエンザに罹りたくないから。効果は100%というわけではないが、コストに見合ったメリットはある。
— なとろむ (@NATROM) October 22, 2015
@usausa1975 救命センター勤務の救急医です。毎年、重症インフル肺炎にしょっちゅう挿管してます。救急やってて打たないなんて、丸腰で銃弾の嵐に突っ込むようなものです。
— pocco (@pocco50) October 23, 2015
@usausa1975 医師です。打ちます。自分のため、職場のため、患者のためです。仕事柄診察でインフルエンザの方も来ますので。
— 真琴 (@nyanko61) October 23, 2015
子宮頸がんワクチンの副反応はどのようなメカニズムで出るのか?
さて、基礎的な知識を学んでいただいたので、そろそろ、上記の記事の話に入りましょう。
先の記事では、子宮頸がんワクチンを打った中学生が、卒業式にも出れないような重篤な症状になってしまったということでした。
この重篤な症状は、このワクチンのどのような成分がどこにどう作用すると現れるんでしょうか?
この重篤な症状に似たものに、ギラン・バレー症候群というものがあります。
ギラン・バレー症候群とは?
ギランバレー症候群とはによると、
人口10万人あたり年間1~2人が発症し、日本では年間2,000人以上発症しているといわれる特定疾患の指定難病です。
若年成人層と高齢者層に多い病気です。
運動障害の症状としては、腰痛(疼痛)、顔面神経麻痺、外眼筋麻痺、球麻痺、感覚麻痺、自律神経障害、排尿障害、呼吸困難などがあります。
そしてこの病気の発症者の60%以上に細菌やウイルスの先行感染が報告されています。
因果関係が特定されているものは、カンピロバクター、マイコプラズマ、サイトメガロウイルス、EBウイルスの4つの細菌やウイルスです。
このような症状が出る原因は、免疫システムに支障がでて、自己免疫疾患(自分自身の神経を免疫システムが攻撃してしまう)を起こすからだと考えられています。
子宮頸がんワクチンでギラン・バレー症候群をおこす可能性
そして、いくつかの「ワクチン接種」によってもこのギラン・バレー症候群は起こる可能性があります。
やっぱり子宮頸がんワクチンをうったから、ギラン・バレー症候群になったんだ!
って思う人もいるかもしれません。
しかし、これについては、 最初にお示ししましたWHOから出された子宮頸がんワクチン、WHOが再び安全声明-日本の状況に言及、「真の被害もたらす」で既に200万人を対象にして調べられていまして、そこには、
(子宮頸がんワクチンによる)ギラン・バレー症候群に関しては、主に接種後3カ月以内でリスクの上昇がみられたが、接種者10 万人当たり1人程度
と、書かれており、普通の発症率と変わらないことが報告されています。
なぜ、小学6年から高校1年の女性に子宮頸がんワクチンをうつのか?
もし、子宮頸がんワクチンで、「手足が動かなくなるなどのギラン・バレー症候群」みたいな症状が出るとしたら、それは、
すでに子宮頸がんの原因であるヒトパピローマウイルスに感染していた
という可能性も考えられます(もちろんほかの可能性もあります)。
この病気の発症者の60%以上に細菌やウイルスの先行感染が報告されているので、
子宮頸がんワクチンをうつ以前に、性交渉や垂直感染(親からの感染)によって子宮頸がんの原因であるヒトパピローマウイルスにすでに感染していたところに、子宮頸がんワクチンをうっちゃったから、免疫が応答してしまって、免疫システムに支障がでて、自己免疫疾患(自分自身の神経を免疫システムが攻撃してしまう)を起こしてしまった
という、まさにギラン・バレー症候群の症状となります。
このようなことがあるので、
子宮頸がんワクチンは、まだ性交渉をしていないと思われる10代の初めにうつ
のです。
もし、すでに性交渉を行っていたのなら、すでにヒトパピローマウイルスに感染している可能性があるので、医者に申告したほうがいいです!
しかし、思春期真っただ中の10代の子供が、親にもバレたくないのに「性交渉した」と申告するのはなかなか難しいと思います。
だから、黙っていて、子宮頸がんワクチンをうっちゃって、ギラン・バレー症候群になっても、「性交渉した」ことを隠し通すしかない。
ということになるのだと思います。
長くなってきたので、
サルでもわかる 子宮頸がんワクチン問題(2)に続く
次回予告
子宮頸がんワクチンによるギラン・バレー症候群以外の可能性
しかし、性交渉もしてないし、垂直感染もしていないのに、この記事のような重篤な症状が出た!と主張する人が「たくさん」います。
10万人に1人は何もしてなくてもギラン・バレー症候群になっちゃうわけですが、それよりも多くの人が、「子宮頸がんワクチンの副反応が出た!」と訴えるわけです。
他国では、同じ子宮頸がんワクチンをうって、こんな症状が出た人はいないのに、日本ではこのような症状を訴える人が多発しております。
なんでか?
サルでもわかる 子宮頸がんワクチン問題(1)
サルでもわかる 子宮頸がんワクチン問題(2)
サルでもわかる 子宮頸がんワクチン問題(3)