いまさら聞けない日米貿易協定のおはなし
2019年11月19日の衆院本会議において、日米貿易協定の承認案が可決され、参議院議員に送られました。
参議院議員で可決されると、30日後にこの協定は発効されます。
巷では、FTA反対!これが可決すると国民健康保険が無くなる!などといろいろ話題となっており、日米FTA締結断固反対!という署名運動までなされております。
実際のところ、どうなんでしょう?
Contents
自由貿易協定(FTA)と物品貿易協定(TAG)の違い
自由貿易協定(FTA)とは?
自由貿易協定(FTA)とは、 Free Trade Agreementの略で、ウィキには、
特定の国や地域とのあいだでかかる関税や企業への規制を取り払い、物品やサービスの流通を自由に行えるようにする取り決めのこと
と書いてあります。
重要なのは、
FTAには物品以外のサービスの自由化も含まれている
ということです。
FTAを締結すると、医療などのサービスも自由にできちゃうということです。
簡単にいうと、この協定を結んだ国では、「ほぼ自由になんでも」輸出入しあいましょうね!ということです。
具体的には、
お肉をたくさん作るオーストラリアはお肉を安く輸出することができ、それを輸入する日本はオージービーフなどの安いお肉を食べることができるし、海外で作られるお薬の値段や外国の人が行う診察費も自由に設定できちゃう。
ということですね。
つまり、今の日本で行われているサービス(国民健康保険や社会保障制度)なども自由になっちゃう「可能性がある」ということです。
FTAで診察費とかも自由にしちゃうとどうなるか?
現在の日本では、お薬の価格を決めるには厚生労働省の認可が必要です。
でも、FTAでお薬の値段を自由にしちゃうと、外国の製薬会社が独自にお薬の値段を設定できるようになります。
もし、外国の製薬会社がお薬の価格を引き上げても、厚生労働省の認可が必要ないので、お薬が高くなり、市民はその高いお薬を買わざるをえなくなるってことになるわけです。
今でいう保険適用外っていうやつですね。
保険適用外だと、負担は10割ですね。
今、お薬の値段や診察料が安いのは、みんなの支払う国民健康保険でお薬の代金を負担しているからなのです。
診察費が3割負担とかでいいのは、日本の皆さんが国民健康保険料を払っていて、それで残りの7割を負担しているからなのです。
ようするに、日本では助け合いが成立しているわけです。
しかし、FTAが成立しちゃうと、国民健康保険では賄えない状態になる可能性が出てくるわけですね。
だから、医療費がアメリカと同じような10割負担になる可能性もあります。
と、同時に、国民健康保険料を納めなくていいことになるので、それを用いて医療費を払えばいいので、ほとんど医者に行かない人にとってはプラスとなります。
物品貿易協定(TAG)とは?
物品貿易協定(TAG)は、Trade Agreement on goodsの略で、FTAとは違い、物品だけの協定です。
要するに、
サービス分野その他の分野を含まない物品貿易に限定した自由貿易協定
です。
また、この物品に関しても、一つ一つの物品に関して協定を結ぶので、関税が高いものも低いものも無いものもあります。
日米貿易協定はFTAではない
重要なのは、
今回衆院で可決されたのは日米貿易協定(TAG)であり、FTAではない。
ということです。
今回協定でOKとされた農林水産品の輸入品の関税については、TPPの範囲内となっています。
具体的にはお米関係、粗糖・精製糖のほか砂糖と競合する加糖調製品や砂糖菓子(チョコレート菓子等)は全面的に対象外で、牛肉、豚肉、小麦ワインについてはTPPと同じ水準、有税工業品は対象外となっています。
ちなみに、薬とか、医療費とかはもちろん今回の合意には入っておりません。
なので、国民健康保険が無くなったりするっていうのは、今のところ妄想でしかありません。