ゲンジボタルとヘイケボタルを自宅で完全飼育する方法を書いてみた

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ゲンジボタルとヘイケボタルを自宅で完全飼育する方法を書いてみた

皆さんこんにちは。
前回のホタル関連の投稿(すくすく育つよ!ヘイケボタルの幼虫 その3)から
随分と日数が経ってしまいました。

あれからずっと、ヘイケボタルゲンジボタルを飼育し続けております。
いまはもう三世代目かな?って感じです。
今回はゲンジボタルとヘイケボタルの飼い方を簡単に紹介したいと思います。

Contents

上陸(4月~6月)

幼虫の体

ゲンジボタルの終齢幼虫の体長はだいたいメスで3cm、オスで2cmくらいです。

ヘイケボタルの終齢幼虫の体長はゲンジボタルよりも一回り小さく、メスで1.5㎝、オスで1㎝くらいです。

ゲンジボタルヘイケボタルも、幼虫の期間は水中にいます。
ホタルの幼虫は、水中でも空気中でも呼吸ができるようになっていますので、乾いてしまわない限りは空気中でも呼吸ができます。

黒矢印が
昆虫なので6本の脚があります。
赤矢印がえら気管


えら気管を拡大すると、気門と気管があることがわかります。
気門は陸上で呼吸をするために使うところで、気管は水中で呼吸をするために使うところです。

お尻の部分には尾脚がついています。
6本の脚と尾脚をうまく使って這いずり回ることができます。

上陸の季節

水温が15度くらいに上がってきて、桜の咲く気温(神戸だとだいたい3月下旬~4月上旬)になると、そわそわしだし、行動が活発になり始めます。

ヘイケボタルの上陸はゲンジボタルよりも遅く、神戸だとだいたい5月20日くらいになります。

上陸のサイン

この時、暗くするとお尻が光っているのがわかります。
昼間でもよく動くようになり、お尻が光りだしたら上陸する準備に入ったというサインです。
中には、水中から石の上に登って、上陸の準備をしている個体もでてきます。

この時期、雨の降る夜になると水中からいっせいに這い上がり、近くの土に潜り込みます
気圧の変化を感じ取り、気圧が下がると雨が降ると予想して這い上がってくるようです。

ゲンジボタルは潜りこめる土が無い場合、陸上を数メートルから10メートル移動して、土を探します。
ヘイケボタルは体力的に2mくらいの移動が限界だと思います。

容器で飼っている場合、足が引っかかるでこぼこの壁だと垂直でもよじ登ります
元気のいい個体だと上陸水槽を用意する前によじ登ってきて脱走することもあるので注意が必要です。

発泡スチロールの容器だと簡単によじ登ってきます。
タッパーなどの表面がつるつるな容器の場合はよじ登ることができませんので注意が必要です。
この場合、紙やすりなどで、プラスチックの表面をざらざらにしてあげたり、ざらざらの橋を作ってあげたりしたら登ることができます

夜になるまで、ミズゴケにつかまり上陸準備をしている個体もいます。

ホタルは全部の幼虫が一度に上陸するわけじゃなく、もう一年水中に居続ける個体もいます。
これは、いっきに全部上陸し、大雨などで羽化できない環境となっても全滅しないようにするためと言われています。

上陸水槽の準備

上陸水槽は、水とぶくぶくを入れた小さいタッパーに入れ、それを大きめのタッパーに入れたものを使用します。
大きめのタッパーの余った部分には赤玉土を砕いた土と、その上にミズゴケを置きます。

ファイルなどを切って、紙やすりでこすって幼虫が滑らないようにしたものを水と陸の橋として使います。

小さいタッパーの水の中に終齢幼虫を入れておくと、上陸します。
室温が25℃を超えるようであれば、冷却ファンをつけてください。
ただし、風が強いとすぐに乾燥しちゃうので、本当に暑いときにだけつけてください
基本、つけなくても大丈夫です。

ホタルは上陸後、幼虫のままじっとして、数日過ごし、その後、土に潜っていきます。
上陸後の幼虫も光ってます。

上陸水槽の土は、湿った状態をキープするようにフタを閉めておきます。
カビが発生しないように注意してください。

蛹(さなぎ)(5月~6月末)

土繭

上陸後、ホタルの幼虫は5~10cmくらい土に潜って体から粘液を出して、周りの土を固め、3cmほどの土繭(つちまゆ)を作ります。
ゲンジボタルのほうが比較的深い場所に土繭を作ります。

土繭の中で、幼虫はさなぎになります

蛹の成長

蛹は白く、その後目などがだんだんと黒くなってきます。
 → 

蛹も光る

さなぎも光ります。

羽化(6月~7月)

羽化と孵化の違いは羽化(うか)と孵化(ふか)の違いをご覧ください。

上陸から羽化までの日数

ゲンジボタルは上陸から30日で羽化(羽が生えること)し、土から出てきます。


ゲンジボタルは、赤い部分に黒い十字の模様が入ってます。
動画は、ゲンジボタルです。
大きさはメスが1.5㎝、オスが1㎝くらいです。

ヘイケボタルは上陸から20日で羽化して土から出てきます。
ヘイケボタルは、赤い部分に黒い一本の線が入ってます。

大きさはメスが1㎝、オスが0.7㎝くらいです。
ゲンジボタルより一回り小さいです。

オスとメスの見分け方

オスとメスは大きさと、おしりにある発光器の違いで見分けます。
オスは2つの発光器を持つのに対して、メスは1つしか光りません。

発光

ホタルで飛びながら光っているのはほとんどがオスです。
オスは、自分の存在をアピールしながら、飛び回ってメスを探します。
メスは、葉っぱの裏側とかにとまったまんま、ゆっくりと光ってます
オスは、メスの発光を見つけると、飛んでいき、交尾をします
草の陰でじっと光っているホタルはメスの可能性が高いです。

交尾(6月~7月)

交尾の方法

羽化後、2日くらいでホタルは交尾を始めます。
交尾は、おしりとおしりをくっつける形で行われます。

上の写真はヘイケボタルの交尾です。


上の写真はゲンジボタルの交尾です。

人工で交尾させる匹数

人工で交尾させるためには、メス1匹に対してオス3~5匹を15㎝x20㎝くらいのタッパーに入れてあげるといいです。
メスは集団で産卵する性質があるため、複数のメスがいると、たくさん卵を産んでくれます。

産卵(6月~7月)

卵の数

交尾を終えたホタルは、水が下にあるコケなどに卵を産み付けます
ゲンジボタルのメスは一匹で約500~1000個の卵を産みます。
ヘイケボタルのメスは一匹で300個くらいの卵を産みます。

卵を産む場所

人工飼育では、湿らせたミズゴケや、水を含ませたスポンジを置いておくとそこに卵を産みます。
ホタルは裏返った状態で卵を産むので、スポンジなどの場合はタッパーの裏に両面テープでスポンジをくっつけたり、立てかけたりすると産みます。
ミズゴケの場合は、ちょっと盛ってあげると、その中で卵を産みます。

上の写真の茶色く見えるのが、スポンジに産み付けられた卵。


ミズゴケに産み付けられた卵はなかなか発見しづらいです。写真の赤い矢印の先にある丸い白いものが卵
ミズゴケを水の中で振ると、卵だけ回収することもできます。

黄色い丸いのが卵。

産卵のためのケージ

ミズゴケに産卵させる場合は、排水口のゴミ受けの中に水を含んだミズゴケとメス1匹、オス3匹くらいをいれ、逃げないように水切りネットなどで覆ってあげます。

スポンジに産ませる場合は、スポンジの固い部分をカッター等で切り取ってください。
スポンジを湿らせ、タッパーなどに立てかけて置いておくとスポンジの中に卵を産みます。

ホタルは卵から孵化した幼虫が下に落ちるよう裏返って天井方向に卵を産み付けるので、スポンジは立てるか、タッパーのフタに張り付けるかしたほうが良いです。
ちなみに、両面テープでフタに張り付けても、水分があるのではがれて落ちてくるので、メラミンスポンジの上に斜めになるように置くのがいいと思います。

※この時、水が入っているとホタルは溺れちゃうので、水は入れないでください。水滴くらいはOK。
ホタルが死んでしまってから、卵の産みつけられたスポンジを回収してください。

ミズゴケやたくさんのスポンジを産卵用のケージに入れちゃうと、どこに卵を産んだのかわからなくなるので、スポンジは少ないほうが良いです。

孵化(ふか)6月末~7月末)

ふ化の条件

卵は、水中でも湿り気のある空気中でも孵化します。
水中で酸素足りるのかなぁ?とか思ってたんですが、孵化するまでの20~30日の間に、汲み置きしてた水を数回替えてあげただけで普通に孵化してきました。
ミズゴケやスポンジの場合は、常に濡れている状態を保ってください。
卵が乾燥しちゃったり、カビが生えたりするとダメなので、風通しの良い場所で、湿っている状態をキープしてください。
室温25℃くらいで大丈夫です。

ふ化用水槽の準備

ふ化させる水槽はタッパーで十分です。
タッパーの中に2cmほど水を入れ、そこに卵が産みつけられたスポンジやミズゴケを入れて、あげていると孵化します。
スポンジを入れる時は、卵がある面を下にして、立てかけて置いておかないと、幼虫が水中に入れないので注意してください。

この、茶色い卵がついている面を下にして入れます。
※写真では、卵がわかりやすいように上に向けてます。
幼虫が生まれるまでは、ブクブクなどは必要ないです。
水が腐らないようにだけ、10日に一回程度汲み置き水と取り換えてください。

ふ化までの日数

ゲンジボタルの卵が孵化するまでには20日くらいかかります。
ヘイケボタルの卵が孵化するまでには30日くらいかかります。
孵化した幼虫は、下へ下へと進んでいき、下にある水の中に落ちます。
この時、水が下になければ干からびて死んじゃいます。
水に入るまでに移動できる時間は2時間程度らしいです。

ふ化後の水槽

ふ化した一齢幼虫は、タッパーの底の部分を紙やすりで削ってざらざらにしたものに水を2㎝~5cm程度入れ、ブクブクを入れてあげます。
隠れ家となる石とかも入れてあげましょう。

本来ゲンジボタルは川の流れのある所に生息しており、岩につかまる力などが強いので、ブクブクの水流でも大丈夫ですが、ヘイケボタルは田んぼとかの流れの少ない場所に住んでいるため、捕まる力が弱いです。
なので、ヘイケボタルにはゆるめのぶくぶくにしてあげましょう。

水温は夏場でも25度以上にならないようにファンなどで調整してください。

タッパーの水替えは3日に一回程度、スポイトなどで行ってください。
貝が腐ったりしてるとダメなので、水の臭いをチェックしつつ、水替えを行ってください。
タッパーの底には藻がついてきて、ミジンコも湧いてくるかもしれませんが、底はそのままで大丈夫です。
洗ったりするとむしろダメな気がします。

ふ化した幼虫の体長

孵化した時点では、ゲンジボタルもヘイケボタルも体長1mm~2㎜くらいです。


ふ化した幼虫はすぐにエサを食べ始めます。

ホタルのエサのカワニナについて

ゲンジボタルのエサ

ゲンジボタルのエサはカワニナだけです。
それ以外の貝は食べません。
人工飼料もいまのところありません。
ゲンジボタルは幼虫の時期から物陰に潜み、夜になってから活動するのでエサを食べているところがあまり観察できません。
卵から孵化したすぐの1齢幼虫は適切にエサを与えないと食べないことが多く、すぐに死んじゃいます
1齢幼虫から脱皮し、2齢幼虫まで育てるのが一番難しいです。

ヘイケボタルのエサ

ヘイケボタルはカワニナ以外の貝(サカマキガイとか)もミミズでも食べます。
ヘイケボタルはゲンジボタルと違って、昼でも盛んに歩き回って、エサを見るとすぐに寄ってくるので育てやすいです。

エサの与え方

私のところではゲンジボタルもヘイケボタルもカワニナを与えています。
カワニナは、大きくなると貝が体長3cmくらいになり、体の中で卵を作り、育て、稚貝を200~300個うみます。

赤い矢印が稚貝。
稚貝は1㎜程度。
カワニナは春と秋に稚貝を産むので、ホタルの幼虫が孵化する頃、ちょうどホタルの幼虫が食べやすい2~5㎜のサイズになっています。

カワニナの構造とホタルの幼虫の口

カワニナは普通の貝と違って、貝のふたを閉めても、少し開いた状態になっています。

赤い矢印の部分から少し身が見えると思います。ホタルの幼虫は、この隙間から頭を突っ込んで、貝に麻痺毒を打ちこみ、麻痺させた後、肉を溶かす溶液を出してその汁をすすっていきます

写真は大きいカワニナを食べている終齢幼虫

1齢幼虫が大きいカワニナにとりつこうと思っても、フタで圧迫されて死んだり、スピードが追い付けなかったりします。
なので、貝の大きさと、幼虫の大きさは貝が少しだけ大きいくらいがいいのです。

ホタルの幼虫がカワニナに毒を注入すると、カワニナは嫌がって、フリフリ行動をし、ホタルを剥がそうとします。

与えるカワニナの量

ホタルの幼虫は1匹で一年間で、カワニナを25匹程度食べると言われています。
特にゲンジボタルの一齢幼虫には5㎜程度のサイズの稚貝をたくさん与えることが重要です。
一齢幼虫でちゃんと食べなかった個体は死んでしまいます。
何も食べずにいると、1か月くらいで溶けて死んでしまうみたいです。

稚貝がいない場合には、2㎝程度のカワニナをハンマーなどで潰し、中身を取り出し、腐りやすい内臓(緑色の部分)をちぎって、身だけにして与えます。

写真は身だけにしたカワニナに群がるヘイケボタルの1齢幼虫。

ゲンジボタルは、身だけにしたカワニナをなかなか食べてくれない可能性があります。
ゲンジボタルは臆病で、夜にしか活動しないので、食べているのかどうかもわからないです。
翌日、ヘイケボタルに与えた身は跡形もなくなくなっているのですが、ゲンジボタルの場合は身が半分くらい残っていることもあります。(ただし、ほぼ溶けてはいる)
なので、ゲンジボタルにはできるだけ、稚貝をそのまま与えたほうが良いです。
2齢幼虫になったら、もう後は育ってくれると思います。

カワニナに稚貝を産ませる方法

カワニナは、ブクブクの付いた水槽で水をきれいに保ち、キャベツと煮干しを与えていれば、春と秋には稚貝を産んでくれてどんどん増えていきます。
カワニナは貝ですので、カルシウムが不足していると死んじゃいますので、カキの殻とか煮干しを与えるようにしましょう。

ホタルの幼虫(8月~12月)

たくさんカワニナを食べた幼虫は脱皮をして大きくなります。
個体によって、食べ方が違うので、5㎜程度のヘイケボタルの幼虫もいれば、1㎜のままのゲンジボタルの幼虫もいます。

もうこれはどうしようもないので、見守ってください。

10月ごろになれば、たくましくなった幼虫になっていると思います。

冬場の過ごし方(12月~3月)

ホタルの幼虫は寒さには強いので、ほとんど氷点下にならない神戸では外でも飼えます。

私は押し入れに入れる衣装ケースに水を入れ、台の上に二つのタッパー(側面に穴が開いている)をおいて、水槽用のポンプで水を循環させるやり方で放置してます。
タッパーの中にはホタルの幼虫と、カワニナたくさんと、隠れるための石が入ってます。
ゲンジボタルの幼虫のいるタッパーは、川を再現するため、水量を大目にしてます。
ヘイケボタルの幼虫のいるタッパーは、田んぼや池を再現するため、水量を少なめにしてます。
水量の調節は、水の出る穴をセロテープで防ぐだけで出来ます。
3月中旬ごろに、上陸水槽へと幼虫を移せば大丈夫です。


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