変な名前の遺伝子たち
2017-09-07
いい加減、生物学の話題書けや!って言われそうなので書きます。。。
Contents
ダウン症の学習能力が改善する化合物「アルジャーノン」
先日、新規化合物に「アルジャーノン」という名前が付けられました。
なんでも、この「アルジャーノン」という化合物をダウン症の子供を妊娠した母マウスに投与すると、生まれてきたダウン症の子供マウスの学習能力が飛躍的に改善したということらしいです。
胎児期にダウン症改善 化合物「アルジャーノン」発見 マウス実験で学習能力が向上 京大
2017.9.5 07:25更新ダウン症の子を妊娠したマウスに投与すると、生まれた子の脳の構造が変化して学習能力が向上する化合物を発見したと、京都大の萩原正敏教授(化学生物学)らのグループが、5日付の米科学アカデミー紀要電子版に発表した。化合物の作用で神経細胞の増殖が促され、ダウン症の症状が改善されるという。
(略)
萩原正敏氏は、第1回日本RNA学会年会 とかにも参加してくださってたので一方的に知っております。(一応、研究者してたので。。。)
で、これが人間に応用できるか?っていうと、倫理観の問題とかいろいろ絡んでくるのですぐにはうまくいかないのですが、もし、人間でもこれが作用するのであれば、
出生前診断でダウン症と診断されたら、この薬を投与することにより正常な人と変わらない状態で生まれてこれる。
ってことになります。
なので、画期的な化学物質ですね。
ただ、ダウン症特有の顔などまでもが治るか?と言われると、怪しいかもしれません。。。
アルジャーノンに花束を
このアルジャーノンという名前は、「アルジャーノンに花束を」
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という物語に出てくる「アルジャーノン」というマウスに由来してると思います。
ちなみに、私はずいぶん昔に、このDVDで見ていたので知っていました。
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この物語のあらすじ(ネタバレ有り)
「アルジャーノン」は普通のネズミだったんですが、脳の手術によって、めっちゃ賢くなってしまいます。
その「アルジャーノン」の劇的な知的変化を人間でも試してみようということになり、知的障害のあるチャーリーが被験者に選ばれます。
そして手術は無事に成功。
チャーリーは数ヶ月でIQ185の知能を持つ天才に変貌します。
しかし、一方で、すべてを悟りつくしたネズミの「アルジャーノン」は、知能がどんどん落ちて、最終的には元よりもダメになってしまいます。。。
果たして、チャーリーの運命やいかに?
というわけで、アルジャーノンなら、最終的には知能が元に戻ってしまう(っていうか、元より悪化する)ので、この化合物の名前にはふさわしくないような。。。
って思ってしまいました。
まあ、本人らは、「アルジャーノンに花束をを意識してない!」って言ってるので、そうなんでしょう。信じないけども。
ちなみに、この「アルジャーノン(Algernon)」は、Altered generation of neurons(グーグル翻訳では「ニューロンの生成の変化」)というもので、一応、意味はわかるものです。
(下線は適当につけてみました。)
おもしろい名前の遺伝子
武蔵
ちなみに、こういう、後付けで名前を付けるっていうのは遺伝学でもたくさんあって、たとえば、ハエの触角が二つにわかれちゃうような遺伝子のことを「Musashi」と名付けたりしてます。
これは、宮本武蔵が二刀流であったことに由来してます。(名づけた本人から直接聞いたので間違いないです)
サウザー
「サウザー(Myo31DFsouther) 」という遺伝子もあります。
これは、北斗の拳に出てくる、心臓が右側にあるためにケンシロウが苦戦する南斗六聖拳「将星」の男、聖帝サウザーにちなんでつけられた遺伝子名で、この遺伝子が変異すると、内蔵の位置が逆になるという遺伝子です。
まさにサウザーですね!
ソニック・ヘッジホッグ
ソニック・ヘッジホッグ (Sonic hedgehog, SHH) っていう遺伝子もあります。
これは、ゲームの「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」が由来です。
名付けた人が、好きだったようです。
脳だらけ
また、脳がたくさんできちゃうような変異体を解析して、脳を造りだすために必要な遺伝子を決めた元神戸理研の阿形さんは、その遺伝子を「nou-darake(脳だらけ)」って名付けました。
これもちゃんとした遺伝子名です。へんなおっちゃんです。
「脳だらけ」遺伝子より転載
ポケモン
あと、pokemonっていう遺伝子もありました。
この遺伝子は、ポケモン全盛のときに、英語のつづりの頭文字をわざとポケモンになるようにした(POK赤血球系・骨髄球性幼若化因子:POK Erythroid, Myeloid ONtogenic factor)だけで、遺伝子の働きとポケモンは全く関係なかったし、この遺伝子はガンに重要だったし、株式会社ポケモンの米国法人であるPokémon USAに訴えられそうになり、あとで名前をZbtb7に変更させられちゃいました。
ピカチュリン
電気信号系の遺伝子で、電気ポケモンであるピカチュウをもじった「ピカチュリン(Pikachurin)」ってのがあります。
名前と機能とがあってると、名前変更しなくてもいいようで、これも、ポケモン全盛期の時に名前がつけられました。
アルマジロ
アルマジロ遺伝子ってのもあります。
これは、ショウジョウバエの体の節を制御する遺伝子です。ちょうど、アルマジロの甲羅のような規則正しい体節がおかしくなることから名づけられました。
節足らず
体節関係でいえば、フシタラズ(fushitarazu)っていう体節形成に関与する遺伝子もあります。
節が足りないから、フシタラズ。。。
腹切り
ハラキリ(Harakiri)遺伝子は、自殺する細胞に関する遺伝子です。
腹切りですね。
出雲
イズモ(Izumo)っていう遺伝子は、卵子と精子を結びつける働きがあります。
これは、縁結びのご利益で知られる出雲大社から命名されました。
悟り
サトリ遺伝子ってのもあります。
このサトリ遺伝子がおかしくなると、メスに全く興味を示さなくなります。
なので、それを見つけた研究者は、「こいつ、悟ってる・・・」っていうことで、サトリ遺伝子と名付けました。
しかし!そのサトリのハエ、実は、メスに興味を示さないのではなく、オスに興味があったのです!
悟ってネーヨ!むしろ、サトリとは真逆!
って感じで、遺伝子の名前はまだまだ面白いものがたくさんあります。
あなたも研究者になって、面白い名前を付けてみては???